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進めば進むほどに遠退くは家
私は恐ろしく方向音痴だ。
家から自転車で40分の高校に通っていた私は、高校2年の初夏にひらめいた。
そうだ、今日はいつもと違う道を帰ってみよう!
そのひらめきが後に今読んでいる人の予想を全く裏切らない事態になるとも気付かず、一度も通った事の無い道へと自転車のハンドルを切ったのです。
とにかく進んだ。前へ前へ。謎の自信を持っていた。
大丈夫!全ての道は繋がっているから!!
10分後、とにかく方向音痴ですぐに迷子になる私に母も友人も言っていた「一人で知らない道を行かない事。行きたいならば誰かと一緒に」という言葉を思い出したにも関わらず
彼らは分かってない!私はこんなにも自由だ!という謎の高揚感に襲われていたのでした。
20分後、知らない景色を一人自転車で疾走するなんて16歳にして初めての経験だ!すごい!すごいぞ!!何処にだって行ける!!家にだって帰れる!!!とテンションは最高潮。
約30分後、やっと気が付きました。
これ…逆方向じゃないか?
一度ブレーキをかけ、周りを見回した。
知らない…本当に知らないぞ……表示されている地名も聞いた事がないぞ…こんなの聞いてない……こんな結末だなんて聞いてない!!嘘だ嘘だ嘘だ!!!家に帰れないじゃないか!!!
パニックになりかけた瞬間に思い出した。
ずっと真っ直ぐ進んでいた事に。
約30分かけて引き返そう!!
知ってる道まで!!!
こうして1時間強の自発的迷子を経験し、学校を出てから2時間後に帰宅をしたが、母には迷子になったことを黙っていた。
そして私はこう思った。
道は繋がってない事もある。
でも間違いに気付いた時に間違いを認めて引き返せば大丈夫。
迷子になっても一人でちゃんと帰ることができたんだ、やっぱり私は自由だ!!
今日の経験はきっと無駄じゃない!!と。
そして時は進み、夫という心強い道案内を見付け、夫に頼れない日はスマホの地図アプリを起動する日々を手に入れた。
それでも私は道に迷う。
ヘラヘラしながら迷子になる。
娘と2人で出かけるとかなりの確率で娘を巻き添えに迷子になるけれど、娘は言う「間違えたら戻りゃええがな」と。
あぁ…ありがたや。