彼は駅から少し離れたマンションに一人暮らしだった。 殺風景な部屋には必要最低限のものしかなかったし、女の影もなさそうだった。 彼との2回目のデートであっさりと家に来てしまった。私が独身なら2回目のデートではちょと早いだとか色々葛藤もあったかもしれない。 でも私にはそんな呑気な時間もない。少しでも女として女でいられるうちに女の楽しみを味わっておく必要がある。もし明日死んだら、『ああ。こんなことなら彼とキス以外もしておいたらよかった…』なんて思うのが嫌だった。人生は一度
彼と別れてすぐに「今日は楽しかった!」と、連絡が入った。 私も楽しかったし、もう既に次に会いたくなっていた。 彼は一緒にいる間、私のことを褒めまくっていた。こんなに好意を言葉や、表情、行動、全身で表す人っているんだなと感心させられた。 さらに、その称賛はLINEでも続き「こんなに自分のどストライクの人に偶然出会えるなんて思ってなかった」とまで言われた。 ここまで露骨だと引いてしまうところだが、彼のキャラクターのせいか、すんなり受け止めることができたし、ただただ嬉しかっ
日も落ちてきたので、そろそろ出ようかとカフェ・バーを後にした。 彼に実年齢がバレていた衝撃で、完全にイニシアチブは彼がとっていた。 デレデレしていた彼が余裕のニヤニヤに変わりつつあった。 お店を出たところで彼がどうする?帰る??晩ご飯行こうか?と聞いてきた。 ランチ→散歩→お茶→晩ごはん??? そんなフルコースは想定してなかった。 「俺はまだリイハさんと一緒に居たい。だから晩御飯も行こう?」 そんな風に言われて悪い気はしなかった。 気ままにお店を探すために、また
彼と出会ったのはある秋の終わり。 暖冬のせいか、もうすぐ12月だというのに軽装でも十分だった。 たまたま彼が昔住んでいた場所と、私が結婚前に住んでいた場所が近くだった。 お互いの土地勘が一致した場所のカフェでお茶でもしようと話した。 お互い会ったこともない、今までの人生で一度も接点が無い人なのだから。 もし、話が合わなくたって、記憶に残す必要もない。お互いに興味がなくても、友達になることもなく日常に戻っていくだけだから。軽い気持ちでお茶でもしようかとなった。 い
深淵。 心の深淵は特別なことじゃなくて。 きっと誰しもが自分の心の中に持ってる。 誰もがぽっかり空いた深淵の縁に立ってる。 その中をこっそり覗くのか、そのまま落ちてしまうのか。知らないまま背を向けたままやり過ごすのか。 それは個人の自由だと思う。 深淵の先に何が広がってるのか、そこから這い上がれるのか。別の世界につながっているのか。 それは落ちた者にしかわからない。