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3.わたしのELLEGARDENとMちゃん

あなたは、若い頃に夢中になったミュージシャンはいますか?当時の友達に一生懸命勧めたり、夜中までアルバムを聞き込んだミュージシャンは?

わたしの場合はそれがELLEGARDENだった。ご存じだろうか、ELLEGARDEN。メロディアスパンクバンドと呼ばれて、30代40代くらいのバンド好きな、かつての若者達のハートを鷲掴みにしていたものだ。

わたしとELLEGARDENの出逢いは高校生の時。ELLEGARDENは無期限活動休止中のころだった。

特に音楽好きでもなかったわたしだったが、授業でバンドを組むことになり、音楽の先生から「好きな曲を選んで演奏するように」と指示を受けた。

その頃はBUMP OF CHICKENが台頭して、メジャーなJ-ROCKバンドもたくさん出てきていた。その辺の、音楽未経験者も弾けそうな曲を選んで…と即席バンドメンバーが思いかけていたところで、MちゃんがELLEGARDENの『ジターバグ』を持ってきたのだ。

Mちゃんはわたしにとって親友だった。Mちゃんは色白で猫っぽいかわいい顔をしていて、オタクでコミュ障で、その癖プライベートでバンドを組んでベースを弾いている女の子だった。

Mちゃんはわたしにとってカリスマ的な存在だった。クラスではオタク枠で影が薄い方だったけれど、主張にも趣味にも癖があって、そこがまた好きだった。

そんなMちゃんだったがわたしとは微妙に趣味がずれていて、勧められてハマったものはなかった。『マクロス』とか、『ぬらりひょんの孫』とか、アニメ『妖怪ウォッチ』とか…。

だから正直ちょっと油断していた。えるれがーでん…?聞いたことないな…くらいの気持ちであった。そんな気持ちで聞いたわたしのファーストコンタクトには、鮮烈な衝撃が走った。

『ジターバグ』の直線的に突き刺さるメロディラインが、疾走感が、飾らない歌詞がわたしの頭と心をグワングワン揺さぶった。聞いていると自分が高速で飛んでいるかのような錯覚を覚えて、光の残像がわたしの周囲に線を引いているようだった。

それからはもうELLEGARDENの楽曲を漁るように聞きまくった。聞けば聞くほど、真っ直ぐ心に突き立てられるようなメロディと、歌詞に隠れた劣等感に夢中になった。

今でもELLEGARDENが大好きだが、やっぱり、もうわたしが30歳を超えてしまったからだろうか。胸が沸騰するような、共鳴して苦しいようなあの感覚はもう味わえない。

あんなにハマったのはダークなカリスマMちゃんが教えてくれたからか、わたしの若いアイデンティティが応鼓したからなのか…。きっといろんな要素が折り重なって、ELLEGARDENはわたしの青春そのものに押し上げられていた。

ELLEGARDENの昔の曲は、最近はあまり聞かなくなった。大好きだけど聞かない。バンドTシャツは着るし、しょっちゅう口ずさむけど聞かない。そうやってなんと言うか、大事にしまいこんでいるのだ。

大事な青春が、風化したり日焼けしたり傷んだりしないように、自分の背中の方の影になっているところに、大事に置いている宝箱の中に隠しているのだ。

せっかくELLEGARDENの活動が再開したというのに。なんだろう、好きなのに避けちゃう、みたいな。それこそ高校生じゃないんだから、そんな拗れた性癖は捨てるべきなのだが…。

だから、皆さんが聞いてください。ELLEGARDEN。久しぶりの人も、初めての人も!誰かハマってくれたら、わたしのMちゃんも喜びます。


ライライ




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