龍とドラゴン:似て非なるもの
龍とドラゴン、同じものとして捉えてませんか?
その違いについて語ります。
私にはAnne というフランス人の友達がいる。
5年前に奈良で知り合い、彼女が帰国後、コロナパンデミックの間もWhatsAppで連絡を取り合っていた。
語学交換と称して、平均して2週間に一度ほど、1時間くらい話す。(半分英語、半分仏語、日本語は少々)
その中で、「干支」の話をしていた時のこと。
生年月日を聞くと彼女が「辰年」生まれだと分かったので、そう告げると、途端に機嫌が悪くなった。
「日本では、辰(=龍)は神様でもあり、みんなから尊敬されている、むしろカッコいいのよ!」と言っても一向に不機嫌なままだ。
「龍」を英語に訳そうとすれば、「ドラゴン」しかないのだが、龍とドラゴンのイメージの違いをその時、まざまざと感じたのだった。
と言うことで、ちょっと調べて見たくなった。
な~るほど!
強力で恐ろしい! 火を吐く!
他にも調べてみると,西洋の「ドラゴン」は神々に敵対するものとして描かれている。
特に聖書の中ではサタンと結びつけられており、「悪のシンボル」と言うイメージを払拭できない。
だから、Anneが嫌がったのか。
しかし、本当は少し裏事情があって、彼女の一つ上の夫が卯年生まれであると知ったことも関係している。
彼女よりずっと身体の大きい夫だが、恐妻家で、何もかも妻の言いなり。
フランスでは兎肉も食べるので、私の頭の中では、小さなドラゴンが大きな兎を食べている図が浮かんで、思わず笑ってしまった。
多分、彼女も同じことを考えて、バツが悪かったに違いない。
「ドラゴン」の特徴はこんな感じ ↓
一方、東洋の「龍」は、龍神や龍王と言うように、神様や王様となり、奉られて信仰の対象となっている。
稲作文明のアジアでは大切な水と関連するものとして、そのように発展したのだろう。
「龍」の特徴としては、「三停九似」が挙げられる。(南宋の『爾雅翼』)
三停:首-腕の付け根-腰-尾の各部分の長さが等しい
九似:角は鹿、頭は駱駝、眼は鬼(幽霊)あるいは兎、身体は蛇、腹は蜃、背中の鱗は鯉、爪は鷹、掌は虎、耳は牛にそれぞれ似る
また口辺に長髯をたくわえ、喉下には一尺四方の逆鱗がある
そうそう、「逆鱗に触れる」って言葉はここから来ているそうだ。
出典は「韓非子」
逆鱗は龍のあごの下に逆さまに生えた鱗のことで、これに触れると、普段はおとなしい龍が怒って殺されるという伝説がある。
転じて、上司や先生などに逆らって激しい怒りをかう意味で使うようになった。
異文化を理解するのは難しくもあり、面白くもあり。
その背後にある人々の意識の集合体の流れを知るのも楽しいと思う。