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1-4.新人賞なら即落選の「悪いオリジナリティ」6選(具体例つき)

どうも、現役ラノベ作家ののべろです。

新人賞を複数受賞した経験や、
アマチュア作家の原稿を何十と読んできた経験を活かし、
プロ作家が持つライトノベルの技術をnoteに言語化・体系化しています。

プロのラノベ作家を目指す方、
特に新人賞受賞を狙う方に役立つ記事を投稿していきますので、
ぜひフォローしていただけると嬉しいです。


長らくおまたせしてしまいましたが、
ライトノベル技術体系における
オリジナリティ編は今回が最後です。

前回の記事では、
ライトノベルにおける「良いオリジナリティ」の特徴について解説しました。

まとめると、

①読者が面白さを想像できる
②オリジナリティが物語全体に活きている
③キャラクターの魅力に繋がっている

良い作品というのは、オリジナリティが
上の3つのポイントをしっかり満たしている作品です。

そして今回は前回の反対、
悪いオリジナリティについて解説します。

新人賞に通らない・書いた作品が評価されないことで悩んでいる方にとっては、
これまでの記事の中でもっとも直接的に役立つ記事
だと思います。


あなたの作品はなぜ落選してしまうのか


創作者なら誰しも、
新人賞や投稿サイトに出す作品を書き始めるとき
「これは良いアイデアを思いついた! きっと受賞・書籍化できる!」
と思っているはずです。

ですが実際には、
アイデア段階で失敗している
ことも多々あるのが現実です。

すなわち、プロの目から見れば
「そのアイデア・オリジナリティで書いちゃうと、
どんなに高い技術力で仕上げても受賞・出版は難しいよ……」
という状態で作品を書き始めてしまうのです。


実際、僕がココナラで行っている作品講評では、
過半数で「アイデアから変えないと難しい」
とアドバイスしています。
(指摘する方も心苦しいのですが、
核心を指摘するのが一番成長につながると思っています)


僕はラノベ新人賞を複数受賞して作家になりましたが、
最初に書き上げた作品で受賞したわけではなく、
受賞した回数以上に落選を繰り返しました。

今振り返ってみれば、
落選作はすべて、そんな状態で書き始めたものでした。

すなわち、
アイデア・オリジナリティの時点で見込みがなかったのです。

プロとなり、アマチュア時代より遥かに高い技術力を身に付けた今の僕が、
いくらキャラクターや構成や文章を工夫したとしても、
あれらの落選作を改稿して受賞することは至難の業でしょう。

このように、
オリジナリティの段階で失敗すれば、すべて取り返しがつかなくなります。

最初の第一歩を間違えてしまったために、
数ヶ月の間、見込みのない執筆に時間をかけることになるのです。

後から振り返って
「そもそもアイデアがダメだった、頑張って書いたのに無駄だった」
と思うのは悲しいことです。

前向きに捉えるなら「それも成長」とは言えますが、
事前に避けられるような失敗は避けるべきだと僕は思います。


僕は落選を繰り返すことで、
一つずつ「こういうのはダメなんだな」ということを学び、
一歩一歩受賞に近づいていきました。

そうするしかなかったのは、
「こういうのはラノベでは厳しいよ」
を教えてもらう機会がなかったから
です。

いえ、もしかしたらそういう情報を見たことはあったかもしれませんが、
「いいものを思いついた! きっとこれは面白い!」と思っている状態で
抽象的なアドバイスを咀嚼するのは難しいことです。


本noteでは、具体的な失敗例も交えながら解説することで、
より実感しやすく、より自分を省みやすく工夫しています。

少し形は変えていますが、解説する失敗例は、
僕自身の過去の落選作や、
僕が読んだアマチュア作家さんの落選作がもとになっています。

机上の空論ではない、本当にやってしまいがちな、
リアリティのある失敗例がたくさんあります。

と言うのも、アマチュアがやりがちな失敗というのは
パターンが決まっているからです。

自分が今から書こうとしている作品、
あるいは今まで書いた作品が当てはまっていないか、
考えながら読み進めてみてください。

「自分はこんなミスやってないよ」と思わず、
シビアに考えるのがポイントです。

みなさんにはこれを読んで、
避けられるはずの失敗を避けてほしいと願っています。

それでは始めましょう。

①多くの読者の期待を裏切る(逆張りしすぎる)


第一に、「多くの読者の期待を裏切る(逆張りしすぎる)」を挙げます。

これは本当に、「やってない」と思いながらやってしまいがちな失敗です。

しかも厄介なのは、思いついた瞬間は
「これはまったく新しい、素晴らしいアイデアだ!」
と思ってしまいがちなこと。

しかも、確かに発想は新しいので、
新人賞なら一次選考は十分に通ってしまいます。
……が、受賞はできません。


僕は明確な理由があって、
複数ある項目のうちの最初にこれを持ってきました。

それは、ライトノベル創作の基本である
「読者目線になって考える」
ことを思い出してほしかったからです。

この失敗はなぜ起こってしまうかというと、
読者が求めていないところにオリジナリティを求めてしまう
ことに原因があります。


・「まったく新しいラブコメ」は面白いのか?

ちょっとしたストーリーを交えながら、例を出してみましょう。

とあるライトノベル作家志望者のAくんは、
ラブコメの新作を書き、新人賞に応募しようと考えていました。

しかし、ラブコメはすでに世の中にたくさんあります。
受賞を狙うには新しいアイデアが必要だとAくんは考えました。

そこでAくんは、ヒットしているラブコメをたくさん読んで勉強し、
とあることに気づきます。

「ラノベって、『ごく平凡な主人公が、自分は全然モテないと思ってたら、実は可愛い女の子にモテていました!』みたいな作品が多いな……」
「こういう都合が良すぎる物語って良くないよな……批判を見かけることもあるし、俺と同じように思ってる人も多いはず……」

「じゃあ逆に、『主人公がモテていると思い込んでたけど、実はモテていませんでした!』という作品を書いたら新しいし、面白いんじゃないか?」

いかがでしょうか。

読者の予想を裏切るような、ひねりのあるアイデアが生まれました。

Aくんの発想を見て、「たしかに! いけそう!」と思いましたか?
それとも、「そりゃダメだよ」と思ったでしょうか?

僕なら迷わず「ちょっと待て!」と警鐘を鳴らします。


・読者は何を求めてラノベを読むのか

Aくんはラブコメを読んで、「都合がよすぎる」と解釈しました。

確かに間違っていないでしょう。

都合が良すぎるくらいモテる作品に違和感を感じることはあるでしょうし、
それが批判されることもあります。

ですがこの発想は、
読者のことを考えられていません。

ならその作品を好んで読んでいる人はどう考えているかというと、
「都合がよすぎてもいい」と思っているはずです。

いや、都合がいいとか悪いとか、
そんなことを考えたこともないかもしれません。

ラブコメの楽しさはいろいろありますが、
「ヒロインが可愛い」という面ももちろんあれば、
「主人公がモテている様子を見て、
まるで自分がモテているような体験する。それが楽しい」
という面も少なからずあります。

「モテる」までいかなくても、
主人公がヒロインたちに影響を与え、
その結果として見直されたり承認される。

そういう物語になっています。

主人公がヒロインたちに見向きもされない作品なんて、
ラブコメ読者は望んでいません。

もっと言えば、
都合の良すぎるラブコメを批判している人たちも、
都合の良くないラブコメが出たところで読まないでしょう。

そう考えると、いくら新しいラブコメを考えるとしても、
「モテる」の部分は外してはいけなかったのです。

例えば「そんな都合のいいこと起こるわけない!」の発想からズラすとしても、
「イケメン主人公がモテる」ならOKだったわけですね。


・他の例

上の例が極端すぎると感じた方のために、
他の例もいくつか置いておきます。

ラブコメ以外でも、「読者が求めていないひねり方」はたくさんあります。

自分もやってしまっていないか、考えてみてください。

【ラブコメ】
・主人公が振られ続けるけど頑張って努力する物語。
読者目線で、ラブコメで振られ続ける様子を読むのはしんどいです。
ギャグっぽく書くならギリギリいけるかもですが……。

振られるのはプロローグなどの最初だけで、あとは目的に向かって前向きに進んでいき、実際に見直される。そういう構成なら受け入れられます。

・美少女が存在しないラブコメ
言うまでもなく、存在したほうが嬉しいです。

web投稿サイトで、
「美少女だと思ったら実はみんな男だった」というネタの作品を見たことがあります。

ギャグのひとネタとしては面白そうですが、ちゃんと美少女がいてコメディも面白い作品に勝てるでしょうか?

【バトルもの】

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