エンジンの様子が遠隔でわかる「最新鋭の漁船」を紹介|長崎県 大中型まき網船団 海興水産株式会社の例
今回はライトハウスと協力して機関室の遠隔モニタリングシステムを導入した、長崎県の大中型まき網船団 海興水産株式会社の冨田さんにお話をお伺いしました。
同社の運搬船・第五十八神陽丸では、エンジンの回転数や冷却水の温度などをデータ化し、遠隔で常に値を監視しながら日々の保守管理に役立てています。
今回はそんな同社の最先端の漁船に導入されているシステムの事例をお届けします。
遠隔モニタリングシステムを導入した理由
LH)冨田さん、本日はお時間をいただきありがとうございます!
まずはこのような先進的なプロジェクトを進めるきっかけとなった出来事があれば聞かせていただけますか?
冨田)私は今の会社に入る前から長らく船団の管理業務をしていて、多いときは一度に20隻もの船を管理していました。
当時は船齢が高かったこともあってひっきりなしに故障報告がきている状況で・・毎日が逼迫していましたね。
故障を早期解決するには船からの正確な情報がほしいのですが、沖は電波がないからスマホでのやりとりもできないですし、機関長の頭の中を言語化することが難しくて・・・沖とのコミュニケーションは常に課題を感じていました。
そんな背景がありつつ、新造船ができるタイミングで新しいことに挑戦したいという思いもあって、今回ライトハウスさんと組んで機関室の遠隔モニタリングシステムを導入したんです。
LH)なるほど、ありがとうございます!今回このシステムを導入するにあたって、海興水産さんとしての狙いはどういう部分なのでしょうか?
大きな目的はコミュニケーションの円滑化と故障の未然防止による「コストの削減」ですね。
たとえ故障が深刻で帰港する判断になっても、原因を正確に特定できていれば、戻ってくるまでの2日間にいろいろな準備ができますよね。
大した準備ができていない状態でいざ船が帰ってくると、想定していたところと全然違う箇所が壊れていたなんてことは過去に何度もあります。
中には原因がわからぬまま帰港したところ、実は沖で簡単に修理できる故障だったなんてことも珍しくありません。
すなわち、情報を正確に伝えることで原因をいち早く特定し、一日でも早く修理を完了できれば、トータルの損失額を大きく減らせるんですよ。
LH)なるほど!もし故障が原因で予定の投網をせずに帰港した場合、損失はどれぐらい出るものなのでしょうか?
冨田)時期によって狙う魚が変わるので一概には言えませんが、平均すると何千万という機会損失になると思います。
小サバなどを取る時期は4~500万円程度ですが、マグロを獲っている時期なんかでは1億円を超えることもありますよ。
予定していた投網ができなくなったことで、出るべき歩合が出なくなるということは大いにあるので、従業員のモチベーションにも関わってきますね。
LH)なるほど、やっぱり大型船はスケールが違いますね!故障が与えるインパクトが本当に大きい・・
冨田)また、データを活用することで、異常をいち早く発見できるようになることも期待しています。
実際のところ機械が突然故障することは少なく、ほとんどの場合必ず何か前触れのサインを出しています。
前触れが見えた段階で適切な対応を実施し、日々の保守管理を進めておくことで、投網できなくなるほどの致命的な故障を予防できますからね。
いち早く異常に気付けるかは機関長の力量に左右されますが、このシステムが手助けになることは間違いありません。
やっぱり人間の身体もそうですけど、怪我をしたときは無理せずに軽いうちに治すことが大事ですから。
LH)確かに、人間の健康管理と同じですね!怪我を隠して無理してしまうと医療費も跳ね上がりますもんね・・
冨田)ただし、このシステムを導入することが、必ずしもコストの削減に直結するわけではありません。
これはあくまで機関長の日々の業務を手助けするための道具であり、使用者自身が意識して使いこなさなければ意味がないんです。
日々機械に触っている現場の従業員が、データを見て異常にいち早く気づき、的確な処置を行えるか。
なのでモニタリングシステムの導入においては、並行して従業員の意識改革もすすめていかなくてはいけません。
うちの新船の機関長は若く先進的で、早速データを使いこなそうと頑張ってくれていますから、これからがすごく楽しみです。
導入後の変化
LH)なるほど、積極的に使っていただけているようで嬉しいです!
ちなみに導入してからまだ時間は経ってませんが、日々の業務に何か変化はありましたか?
まだ稼働して3ヶ月なのでこれといった故障はありませんが、遠隔モニタリングによって明らかな違和感を発見できた事例があります。
機関長がデータ化したエンジンの回転数を分析していたところ、船の速力が想定よりも出ていないことに気づいたのです。
これは機関長が習慣的にエンジンのデータを確認していたおかげで発見した事案でした。
今後は主機エンジンメーカーと協力し、速力のデータを取得して回転数のデータと照らし合わせながら原因を分析していく予定です。
LH)なるほど!違和感を早期発見できたことは幸いですが、大きな故障などではないと願っています、、。
今後の展開
LH)最後に、海興水産さんとして、今後はこのシステムをどのように展開したいと考えていますか?
まずは取得しているデータの共有範囲を広げることですね。
今は機関長が沖でデータを見て分析をしていますが、ゆくゆくは携帯電波が入らない沖でも私と機関長と関連業者が同じ画面を見ながら話ができると、故障の原因究明はもっとスムーズになると思っています。
そのためには衛星回線の通信費という壁があるのですが、近い将来共有できるようになったらもっと業務が円滑になるでしょう。
それにこのプロジェクトはまだ始まったばかりですので、機関室のモニタリング以外でもやっていきたいことはたくさんあります。
直近の構想では魚倉の温度を可視化できるようにしたり、最終的には従業員の安全管理や体調管理までデータ管理できるようにしたいと考えています。
LH)すごい!ますます漁業の可能性が広がっていきますね!
冨田)世界中のあらゆる業界でITが普及していますが、漁業は一番遅れているのが現状です。
漁業がもっと先進的でかっこいい業界になっていけば、若い人たちも興味を持って集まってくると思っています。
うちの運搬船みたいに、今後は機関長がタブレット片手に仕事をするのが普通になっていくべきなんです。
やっぱり時代に合わせた漁業に合わせた形にしていかないといけないですよね。
LH)私たちももっとスピードアップして、今後も漁業者のみなさまの役に立つサービスを作っていきます!冨田さん、本日はありがとうございました!
最後に
私たちライトハウスでは、このような未来の水産海洋業界に貢献する技術開発をすすめております。
今回紹介したエンジンのモニタリングシステム以外にも、魚価の向上や操業の効率化など、情報の共有で改善できる部分は多くあります。
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株式会社ライトハウス
漁業者に向けたプロダクトの開発運営を行っているスタートアップです。 ISANA:https://isana.lighthouse-frontier.tech/ WaaF:https://waaf.jp/ 運営会社:https://lighthouse-frontier.tech/
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