【書評】『行政法Ⅰ行政法総論』興津征雄著 新世社
久々の個別単独紹介です。今回はこちらです。
ちょっと前にX(旧Twitter)で話題になった書籍です。
結論から言うと、「最高にして最巧」。圧倒的な情報量なのに胃もたれせずに読めるようになっています。
頭のいい人が自分の思考過程をすべて示した!問ういう感じです。
行政法総論は、救済法のように訴訟要件というくくりがなく、まさに個別法の仕組み解釈が必要になります。個別法から抽象化された現象を説明するものです。そのため、抽象度が高くわかりにくいものが多く躓きの元といえる分野です。
ロースクールや予備校では救済法から学習する場合もあるほどです。
本書は上述のように緻密に文章が書かれており、具体的に概念をイメージできます。また、多様な具体例を交えた説明になっておりその面でもイメージを強く持てる書籍であるといえます。随所に判例も織り交ざられており判例学習も進みます。個別法の条文の引用も多く、随時インターネットなどで参照していけば条文を読むことができるようになってくると思います。
特によかったと思う部分として、基本用語の理解を徹底する姿勢が使いやすさを感じたポイントです。
各解説の行政調査や行政指導の概念を丁寧に説明しておりわかりやすいです。
また、裁量論については特に審査密度をどう設定するのか?という司法試験受験生がわかりずらい部分の説明がしっかりされています。
さらに、概念については整理して表でまとめていたり、図表が入っていたり、コラムも豊富であり、とにかく情報が多い!
難点は非常に分量が多いため、読み進めることに時間がかかる点です。とはいえ、行政法の辞書的な書籍としては必携の一冊といえる。
最初からこの本で勉強するのではなく、問題を解いて関連判例やその周辺部分を読み進める、一度講義を聞いた後に読み進めることがおススメ
以上