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【書評】『行政法演習サブノート210問』 原田・興津・巽 編著 弘文堂

今日はこちらです!

 先に結論を言えば、おススメです。原則、買って一読するべき本といえるでしょう。もちろん各自の状況、可処分時間、行政法への習熟度、学習段階によりますが、多くの場合で活用可能な一冊と思います。

 本書は、9月26日に発売された行政法の演習書。
 タイトル・出版社通り、サブノート210問シリーズの第4弾です。このシリーズは民法から始まり、刑法、憲法の三部作と思いきや、まさかの続編!しかも行政法とは!これは会社法、刑事訴訟法、民事訴訟法も期待大なシリーズですね。

 さて、行政法の演習書ということで、最初の印象は「もう沢山あるし別に新しいものができても…」「行政法って210問も論点あるのか?問題にできる?」という感じで思っていました。
 そもそも、行政法の演習となれば事例問題、それも引用条文を含むとある程度の長文問題になることが通常です。そのため、サブノート210問のシリーズコンセプトに合わないのでは?とも思いました。

 とはいえ、編著者は錚々たるメンバー。特に興津先生で紫とくればもう…買うしかないかと思い買いました。

 結論から言えば、既存の行政法の問題集よりも低い難易度設定の問題を通じて基礎基本を理解しようというスタンスの書籍であり、類書は見つからないのでは?と見ました。そのため、行政法が苦手で、まだ問題に取り組めないという方、司法試験や予備試験の問題を見てもとっかかりが気づけない方『事例研究行政法』等の既存の演習書でちょっとつまずいている方には、ぜひ読んでほしいかなと思います。
 本書の問題の各テーマは、そのテーマについてしっかり説明できるようになれば司法試験・予備試験の合格答案作成に必要な知識が身につくといえるものです。また、問題や解説も一定の水準で安定している感じがありパッと読んだだけでも違和感をあまり感じません(上三法よりかなり安定していますが、それよりも安定した解説である印象をうけます)。はしがきにもこの点注意している点があり好印象です。

 テーマ選定も司法試験・予備試験にダイレクトに関するテーマ(処分性や原告適格等は類型に応じた問題を設定している)のほか、それちょっと説明できない人多いんだよなぁ…というテーマ(組織法の部分や義務履行確保のあたり等)までしっかりあります。

 最高の一冊といえます。ぜひ回答例を作りたいと思う一冊です。

 一点、残念なところを言えば、問題文を長文にしない配慮か、参照条文そのものの引用がない点です。行政法で参照する条文の場合、ポケット六法でも掲載がないものも多く、ネットで調べようとしても専門性の高い条文のため、該当する条文を発見することに手間取りそうです。行政法の学習をするに際しては、個別法を読み込み、要件の内容を検討することが必要ですし、司法試験等もそれを求めています。一方、個別法の条文の要件そものもを「探索」する点については、引用条文の範囲で探す(探すというよりも道筋をたてて説明できるか)ことができればよいはずです。
 問題ごとに必要な条文についてまとまっているデータがDLできるとかあれば理想的な気がしています。(これも作ろうかね…)

 そんな点を除いても、サブノート210問シリーズに見られる簡潔さ、テーマ設定のよさ、網羅性の高さは非常によいものといえます。



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ともしび
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