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過去の読書記録_2(高野和明)

「ジェノサイド」

アフリカに生まれた新人類が現人類を絶滅に導くと示したレポートを基に,
新人類抹殺を命じられた傭兵.
死んだ父の研究を引き継いで,難病の治療薬開発に挑む日本人大学院生.
二人の物語を軸に進むストーリー.
一見交わることのなさそうな二人の物語が,
病気や戦争・政治・に加え新人類の存在をきっかけに交差していく.
全球を舞台としたストーリ-は,「壮大」.

政治や歴史・生物化学に関する用語がたくさん出てくるので,
部分的に内容を理解が難しいところはあれど
全体的な完成度が非常に高い.
あくまで,SF作品だが,
実際に起こってる,起こってるんじゃないかと思ってしまう.
それには寒気すら感じる.

題名でもある「ジェノサイド」.
人間の歴史を振り返れば虐殺の連続であるが,
人類全体が虐殺の対象となれば,私たちはどうするのだろう.
反抗か服従か諦観か...

現人類とは、愚かな生き物なのか、助け合いができる生き物なのか.
想像を超えた存在が現れたとき,拒絶反応を示してしまうが,
その拒絶が時に破滅を引き起こすことを認識できるかが,分水嶺であろう.

「善行という行為はヒトとして本能に背く行為だからこそ美徳とされる」
分かりそうで分からないこの言葉を理解できれば,
人として成長できるのだろうか.

「13階段」

サスペンス要素が強いミステリー.
死刑囚の冤罪を晴らすべく調査する二人の視点で展開される物語.
物語途中で生々しく描かれた死刑執行に関わった刑務官の心情や被害者遺族の心理には,
読者を引き込む力があった.

死刑制度の是非は,あらゆる場面で議論がなされるが,
新たな視点を与えてくれた作品でもある.

結末までよく練られた話だったが,
個人的には『ジェノサイド』を推したい.

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