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本を読む理由
僕は静かに本を読む。
誰にも気づかれぬように、密やかにページをめくる。
心を揺らす言葉に出会えば、線を引き、折り目をつける。
そうして、僕の歴史をそこに刻む。
僕がいなくなったとしても、この本には僕の思考が残る。僕が感じた美しさ、僕が震えた言葉、僕が触れた世界――
それらは、僕が生きた証として、ひそやかにそこに息づく。
けれど、やがて時が過ぎ、本も僕も朽ち果て、すべては無に還る。
それでもいい。いや、それでいいと思う。
世界が僕に意味を与えないなら、僕が僕に意味を与えればいい。
誰にも見られずとも、誰にも届かずとも、僕がここにいたということを、僕が僕自身に証明するために。
だから、僕は本を読む。
そして、それをここに残す。