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euphoria評(依存するなら💻か❤️か💊)
あらすじ
幼い頃から不安障害を抱え、ドラッグによる一時の安らぎを覚えてしまった17歳の高校生ルー・ベネット。どれだけ家族に心配されようとも、ドラッグを“キメた”直後わずかの多幸感(ユーフォリア)を求めずにはいられなかったルーは、転校生のジュールズとの出会いによって依存症から脱しようとするがー。ドラッグ、セックス、バイオレンス、アイデンティティ、トラウマ、ソーシャルメディア、恋愛、友情…さまざまな問題を抱える若者たちの物語が絡み合いながら激しく加速するー。
感想
ラッパーのドレイクが制作総指揮、A24とタッグを組み、2020年代に最もツイートされたドラマ「euphoria」を見始めた。
シーズン1の私的テーマは、「依存するなら恋とドラッグ、あなたはどっち?」だ。
劇中の主要な人物はアメリカのカリフォルニア州の架空の街の高校生たち。アメフト部のイケメン主将(ネイル)にビッチな美人チアリーダー(マディ)、ナードな主人公(ルー)にぽっちゃりした体型がコンプレックスだが性に関心の強い女の子(キャシー)など、アメリカスクールドラマに典型的なキャラを、何かへのトラウマ、依存を反映したキャラとして、現代にフレッシュに蘇らせている。
そして郊外での彼らの生活への刺激は、恋かドラッグ(あるいはネット)しかない。そうした人間の欲望と人間関係がドラマを生み出していくのだが、マジでそもそもこれだけ濃密に人間関係で悩めちゃってる時点で登場人物の全員のリアルが充実しているというか、シーズン1が2019年の作品なので、コロナ以前の若さの感覚だなと、すでに隔世の感さえある。
あと、やたら体育会系の人間とナードな人間が交錯するが、高校が舞台だからギリ、リアリティあるが、社会人5年もやってると人間関係が固まってくるというか、全く界隈が違う人とはコンビニとか仕事とか、事務的なことでしか会話しないことが当たり前になってくるわけで、しかもインスタとかマッチングアプリとか趣味で繋がり、個人の発信力が高まることがハッピーかというとそんなこともなくて、一方で仕事などでメンタルに不全を抱え適応障害とかうつ病になる人も増えている、そんなモラトリアムもやってられない「Z世代の年長」(1995〜2000年生まれ)に位置する僕としてはあまり自分ごととしてリアリティー持って受け止めきれない部分もある。
そういう意味で最近、映画の登場人物を見て「これって俺だな」と自分を反映できる機会が減った気がする。
高校生、大学生が主人公の映画やドラマはたくさんあるし、中年の人物をメインに据えたドラマも増えた気がする。しかし、都会で生きてて、周りがそろそろ結婚とかし始めて人生の方向性が固まってくる30歳前後に君はどう生きるのかと問うてくれて登場人物たちがロールモデルになってくれるような映画やドラマがあるのだろうか?と思ってdeepseekに尋ねたら、日本の作品では逃げ恥とアンナチュラル、洋画ではフレンズとガールズが上がってきた。どうだろう、euphoriaのあの瑞々しさと映像のクリエイティビティに比べたら観る気が湧かないこのレコメンドリスト。フィクションがこの体たらくだからメンズコーチジョージとか流行るんだよ。筋トレして自分が変わるとか、映画の鑑賞体験に比べて紛れもないリアルでガチじゃん。実際に僕も毎日ランニングするようになってポジティブになったというか、セルフケアできているという自己肯定感の高まりを実感している。計らずしてフィクションが弱くなっているという話でした。