予測する心 単行本 – 2021/2/19ヤコブ ホーヴィ (著), 佐藤 亮司 (翻訳), 太田 陽 (翻訳), 次田 瞬 (翻訳), 林 禅之 (翻訳), 三品 由紀子 (翻訳) Amazonレビュー
視覚を例にすると、我々が主観的に経験している視覚イメージは、トップダウンのメッセージで作られます。
2021年3月9日に日本でレビュー済み
視覚を例にすると、我々が主観的に経験している視覚イメージは、トップダウンのメッセージで作られます。
つまり、上位の知覚領野に於いて、信念に基づいて環境についての仮説が立てられます。この仮説の設定にベイズ推定が用いられます。
下位の知覚領野では、上位の知覚領野が立てた仮説に基づいて、視覚イメージが作り出されます。これが、我々が主観的に経験する視覚イメージです。
この視覚イメージ(予期)をボトムアップの視覚入力と突き合わせます。そこで生じるギャップが、いわゆる「自由エネルギー」です。下位の知覚領野は、そのギャップを解消するように視覚イメージ(予期)を修正しますが、解消しきれないエラー情報を上位の知覚領野へ上げます。上位の知覚領野は、このエラー情報に基づいて、仮説を修正します。上記の処理を多段の知覚領野で行ないます。これが、トップダウン式知覚の脳モデルです。
※計算方法の詳細は、乾 敏郎 (著), 阪口 豊 (著)『自由エネルギー原理入門: 知覚・行動・コミュニケーションの計算理論』を参照してください。私のレビューがあります。
※[蛇足] 私は、トップダウン式知覚の脳モデルは 誤っていると思います。
そもそも、最上位の仮説を どうやって作り出せるのかが分かりません。ベイズ定理は、理想的(合理的)な仮説が存在することを示すだけです。また、仮説が 大きなエラーを起こした場合、数百ミリ秒の中で、使える仮説に修正できるとは思えません。
モザイク写真(多分、モザイク線画でもOK)による両眼視野闘争実験の結果は、確かに、ボトムアップ特徴検出モデルに極めて不利に観えます。これを説明するには、脳が、ボトムアップ特徴検出過程に於いて、組合せ爆発を起こしている可能性を受け入れることです。つまり、知覚表象の絞り込みを最終段階まで遅らせ、最終段階で、相対的に尤度の高い 1つの知覚表象に絞り込むことです。これは、脳が量子コンピュータであれば可能です。途中段階の知覚状態を、整合的な組み合わせから成る大規模集団の量子重ね合わせという量子もつれ状態で表現しておいて、最終段階で、観測作用によって、1つの相対的に尤度の高い整合的な組み合わせの表現状態に縮退します。
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