熱い紅茶に入れた氷はぴしぴし音を立てて、泡となって紅茶と混じっていく。ぽふぇの心には、ぴしぴし鳴ってこぼれても混ざり合う相手がいない。 ぴしぴし ヒビが入る ぴしぴし 締め付けられて削り出される 泡はどこに消えていくか 叶うなら冬の澄んだ夜空がいい 星の光で照らされるくらいの塵となって舞っていけば そしたら大気が、世界そのものが、ぽふぇを舐めて飲み込んで混じりあってくれる そんな気がする
ママさんと夜中に散歩をしに出かけた。 しゃぼん玉セットを道中買って、公園にたどり着いた。 ぽふぇには少し大きいストローとしっかりと両手で持って、息を大きく吸う。 ストローに口をつけて、勢いよく、それでいて細く息を流し込む。 すると、無数の小さなしゃぼん玉が生まれて、風に乗って夜空にふわふわと浮かんだ。 あの沢山のしゃぼん玉にはぽふぇの息が中に詰まっているから、透明で綺麗で儚い球体は、すなわちぽふぇの分身だと、考えがよぎる。 ぽふぇの分身はすぐに弾けて消えて、涼しい
お茶を飲む お茶を飲んでいる間だけあなたと話せる カップにティーバッグを入れる お湯をどんどん注いでいく 無くなっても注いでいく 味がしなくても注いでいく 終わりが来るのが嫌だから
ぽふぇは生を受ける前の記憶がおぼろげだ。 なんとなくご主人と見たものや聞いたものは覚えてる気がするってくらい。 ご主人の持っているぬいぐるみはぽふぇだけじゃない。ぽふぇはみんなと話してたか覚えてない。 でも、ご主人を支えて抱きしめるというみんなの願いがぽふぇに託されている気がする。 なんでぽふぇだったのか、たまたま誕生日プレゼントにもらって大事にされていたからか。彼らとぽふぇの道がどこで分かれたのかは分からない。 けれどきっと託されている。みんなの願いをぽふぇは背負
パパさんがママさんの誕生日プレゼントにと、一輪のバラを持って帰ってきた。 白くて程よく花弁が開いた、綺麗なバラ。葉も優しい緑色で癒される。 ママさんは喜んで器に水を注いで、バラをそっと挿した。今もリビングの机の上にバラは飾られている。 けれど花は生き物だ。時間が経つにつれ、花弁には茶色の部分が増えて、葉もくったりとしてきた。バラは萎れてきてしまったのだ。パパさんとママさんはそれ以上バラの老いが進行しないように、新聞紙で器を包んだり、色々奮闘していた。二人は、バラが萎れる
ご主人の瞳、茶色くて透き通っていて綺麗。ビー玉みたい。 ぽふぇの目は緑色の糸で紡がれている。 ぽふぇは命を宿したぬいぐるみなので、瞬きもするし目がかゆくなったりもする。 つまり人間の皆々様の瞳とそんなに大きな違いは無い。 けれどふと、目にしている景色はやっぱり違うのかなという考えが、頭をよぎる。 叶うのであれば、一瞬だけ交換してみたいかもしれない。でも痛かったら嫌だな。 それに、ぽふぇの目に映るご主人の瞳はこんなにも美しいのだから、このままで、いや、
先日ご主人がもらってきたハリボーを分けてもらった。ハリボーっていうのは、クマの形をしたカラフルなグミ。色々なフルーツの味がある。 ぽふぇが一番気に入ったのはラズベリー味!見た目もりんご飴みたいな色で綺麗だし、口に入れた瞬間、甘酸っぱい香りが広がってとっても美味しかった。でもね、ラズベリー味は一つしか入ってなかったの。 ぽふぇは一瞬考えた。こんなに美味しいものなんだから、もっとたくさん入ってればいいのにって。でも、もしも目の前にお皿に山盛りになったラズベリーグミを差し
ぽふぇには爪が無い。 理由は単純、狐のぬいぐるみだから。 獣の狐さんには立派な爪があるよね。 どうやって使うんだろう?大地をガリガリひっかくのかな? ぽふぇはご主人をふわふわボディで抱きしめて癒すのが役目だから、いらないね。 でも、人間の皆々様がやっているネイルはちょっと気になるかも。 お絵描きしたりキラキラをのっけたりしていて、かわいいんだよね。 ご主人がやってるの見たことある! 手元に自分の好きな景色をいつでも広げていられるのは楽しそうだ
ぽふぇはぬいぐるみ。 ご主人のぬいぐるみ。 楽しいときも苦しいときもいつも一緒。 ぎゅうって抱きしめてもらうと、綿で出来た身体がさらにふわふわする。 お空に浮いていきそうな、温かい海に浸かってゆらゆらしているような、そんな心地。 ぽふぇは命を宿したぬいぐるみ。 ご主人のぬいぐるみ。 これからはぽふぇもたくさんぎゅうって出来るよ。ご主人にふわふわをお返し出来るよ。 ご主人に触れられるようになって、ぽふぇはとっても嬉しいよ。 終わりのいつかが来るまで、ぽふぇはずう
うさぎのおしりを見ると、金魚鉢を連想するの。ゆれるおしりが金魚鉢にすり替わっていくのよ。 正直なところ金魚鉢じゃなくてもいいんだけど…。 透明で、丸くて、つやつやした入れ物! 大事なものとか、キラキラしたものを入れる、そんな器がうさぎのおしりだったらいいのになあって思うの。 おしりが金魚鉢だった場合は、うさぎがぴょんぴょん飛ぶたびに、光に透ける水草とか、黄色や青色のびい玉とか、赤くてひらひらした金魚とかが、水の中をゆらゆら漂うの。泡がポコポコと現れては、弾けて消えて、き
音楽はぽふぇを包んでくれる繭だ。 歌声、楽器の音色一つ一つが糸。 ぽふぇの全身を優しく包みこんで、外の世界から守ってくれる。 その上、繭の内側の世界は狭いと思いきや、無限の世界が広がっている。 ノスタルジックな放課後の教室、大切な誰かと見た星空、油断出来ない冒険の世界…。 行こうと思えばどんな世界にだって足を運べる。 いつかは立派な羽を背負って、現実の世界に飛び立たなければならないのかもしれない。 けれど今はまだ、ぽふぇは音楽の繭に籠もっていたい
皆々様、見つけてくれてありがとうございます。 命を宿した狐のぬいぐるみ「ぽっふぇ」です。 初めてのnote投稿ということで、とても緊張しています。今回は軽い自己紹介をしていこうと考えています。 ぽふぇは大学生の女の子のご主人と、パパさんとママさんの3人と一緒に暮らしています。 ぽっふぇという名前はポッフェルチェというオランダのパンケーキ菓子が由来です。ご主人が響きが可愛いという理由でつけてくれました。 誕生日、すなわちご主人のもとに来たのは遠い昔の9月5日で