「三丁目の夕日」の舞台はどこにある。(2)
「三丁目の夕日」の舞台はどこにある。
一般的なのは、作者が解説することだろう。しかし、本作の西岸良平氏はほとんどマスコミに出ず、映画などが完成しても手記を寄せる程度である。唯一、2010年春、紫綬褒章受章の際、自宅で取材されたのだろうか画像がネットにあらわれている。そのときの詳細は不明だが、本作の舞台の言及はあったのだろうか。
その次に我々読者ができるのは、作品から舞台を読み解くことである。このカットはここだというように、「聖地」を探すことにもつながる。ところが、本作は、在りし日の東京の光景であり、何十年も経った現在ではまったく様相が変わってしまった。
なお、作品に大きな川がまったく出てこないため、通常下町と言われる城東地区でないことの指摘はこれまでもあった。三丁目の川は小川である。
作者のもう一つの代表作である「鎌倉ものがたり」は、作品中、場所が言及されることもあり、また現代を舞台にしていることもあり、カットから場所を見いだせよう。「三丁目の夕日」は、多くの人に親しまれているものの、そんな理由から舞台を探るのは難しいのである。
ただ、作者が住んでいた、経験した場所をヒントに描いたのは確かだろう。そこで、個人情報、プライバシーに抵触しない範囲で、考察を続けてみたい。
資料とするのは、1980年代に連載された「青春奇談」という作品、ある作家のプロフィール、そして「鎌倉ものがたり」のヒロインもヒントになろう。さらに、「三丁目の夕日」全巻読破から、いくつかのカットにもヒントを得ている。
これら、順を追って紹介したい。