「凍結肩に対する非手術的およびリハビリテーション的介入の有効性:最新エビデンスの包括的レビュー」
概要
**Frozen Shoulder(凍結肩)またはAdhesive Capsulitis(癒着性関節包炎)**は、肩関節の痛みと可動域(ROM)の進行的な制限を特徴とする疾患です。本記事は、「Non-Surgical and Rehabilitative Interventions in Patients with Frozen Shoulder: Umbrella Review of Systematic Reviews」(2022年)に基づき、非手術的およびリハビリテーション的アプローチの有効性を包括的に解説します。
疾患の特徴と病態生理
Frozen Shoulderは主に3つの進行段階を示します:
1. Freezing(疼痛期):痛みが増大し、可動域が制限される(2~9か月)。
2. Frozen(硬直期):痛みが軽減し、可動域が著しく制限される(4~12か月)。
3. Thawing(回復期):徐々に可動域が回復(5~26か月)。
主な原因として、関節包の炎症が繊維化を引き起こし、疼痛や可動制限が進行することが挙げられます。また、糖尿病や甲状腺疾患を持つ患者では発症リスクが高いとされています。
リハビリテーション治療の選択肢
本研究では、49件の文献を検討し、基準を満たした14件の系統的レビューを分析しました。その結果、以下のような非手術的アプローチが有効であることが示されました:
1. 徒手療法とモビライゼーション
• Mulligan法やMaitland法を含むモビライゼーション技術が、ROMの改善と肩関節の機能回復に有効。
• 高強度のモビライゼーションは、低強度モビライゼーションよりも効果的とされる。
2. プロプリオセプティブ・ニューロマスキュラー・ファシリテーション(PNF)
• 従来の物理療法よりも疼痛軽減や可動域の向上において優れる。
• 特に外旋の改善において効果が顕著。
3. 物理療法
• 低出力レーザー療法(LLLT):短期的な疼痛緩和と機能改善に有効。
• 超音波療法(US):短期的な可動域の改善が期待できる。
• 経皮的電気神経刺激(TENS):他の療法と併用することで効果を発揮する可能性がある。
4. 薬物療法と注射療法
• コルチコステロイドの経口または関節内注射は短期的な疼痛緩和に効果的。ただし、長期的な効果は不明確。
• ヒアルロン酸注射は一部で有効性が示されているが、エビデンスは限定的。
主な成果と限界
研究全体で、治療法におけるエビデンスの質のばらつきが指摘されています。一方で、以下の重要な知見が得られました:
• リハビリテーション治療は疼痛の軽減と機能回復に役立つが、特定の手法が他の手法よりも明らかに優れているというエビデンスは不足している。
• コルチコステロイド注射は短期的に有効であり、特に初期治療として考慮されるべき。
理学療法士への示唆
理学療法士が患者に提供できる最適な治療法は、個々の病態や進行段階に応じて調整されるべきです。また、以下のような統合的アプローチが推奨されます:
1. 教育と指導:肩の自己管理方法を指導し、治療への患者参加を促進する。
2. 多面的治療:徒手療法、物理療法、運動療法を組み合わせたアプローチ。
3. 個別化したプログラム:患者の症状に応じたカスタマイズされたリハビリプランの設計。
結論
本研究の結果は、Frozen Shoulderに対する非手術的アプローチの有効性を裏付けるものです。ただし、さらなる高品質なランダム化比較試験が必要です。理学療法士は、患者の症状とニーズに合わせた包括的な治療計画を策定することで、患者のQOL(生活の質)の向上に寄与できます。