肩の痛みと動作障害を改善する「小胸筋」の重要性とリハビリ方法

肩の痛みや可動域の障害は、日常生活やスポーツ活動に大きな影響を及ぼします。特に、肩甲骨の動きに関連する問題は、リハビリテーションの現場で頻繁に見られる課題です。本記事では、小胸筋(Pectoralis Minor Muscle, PMm)が肩の動きにどのように関与し、その短縮や硬さが肩の動作障害や痛みとどう関係するのか、またそれに対する評価方法や治療法について詳しく解説します。これは、Nuno MoraisとJoana Cruzによる「The pectoralis minor muscle and shoulder movement-related impairments and pain: Rationale, assessment and management」(2016)に基づく内容です 。

小胸筋の役割とその機能的意義

小胸筋は、肩甲骨を前方に引き寄せる力を持ち、肩の安定性や動作に影響を与える筋肉です。この筋肉が短縮すると、肩甲骨は内側に回転し、前傾・下方回旋しやすくなり、肩関節の正常な可動域が制限されます 。これにより「肩甲骨の異常な動き」や「肩甲骨機能不全」と呼ばれる状態が生じ、肩の痛みや肩関節の障害を引き起こすことがあります。

小胸筋の短縮や硬さは、以下のような肩の障害と関連があるとされています:
• 肩インピンジメント症候群
• 回旋筋腱板の腱障害や断裂
• 肩関節周囲炎(いわゆる五十肩) 

小胸筋の短縮を評価する方法

小胸筋の短縮を評価するためには、直接的または間接的な方法が用いられます。直接的な方法では、小胸筋の長さそのものを測定する一方、間接的な方法では肩甲骨の位置から小胸筋の短縮を推測します 。以下に主な評価法を紹介します。
1. 触診による評価:小胸筋の張力や硬さを触診で確認します。
2. 肩甲骨の位置観察:肩甲骨が前傾・下方回旋している場合、小胸筋が短縮している可能性が高いです。
3. 角度測定:肩の屈曲や外転時の肩甲骨の動きを角度で評価することで、間接的に小胸筋の影響を見極めます。

これらの評価は、特に動作に伴う痛みが生じている患者にとって非常に重要です。

小胸筋の短縮を改善する治療法

小胸筋の柔軟性を高め、肩の正常な動作を回復させるためには、以下のような治療法が有効です。
1. ストレッチング
小胸筋を伸ばすためには、肩甲骨の前方への引きつけを抑えつつ、胸郭から離れるような位置に腕を配置します。これにより、小胸筋が伸展しやすくなります 。例えば、壁に手をついて体を前方に押し出すストレッチングが有効です。
2. 肩甲骨の動きを改善する運動
小胸筋だけでなく、肩甲骨周囲の筋群(僧帽筋や菱形筋など)も強化することで、肩の安定性を高めることができます。これにより、肩甲骨が正常な位置で保持されやすくなります 。
3. 姿勢の改善
デスクワークなどで肩が前方に引っ張られることが多い人には、肩の位置を意識する姿勢矯正が役立ちます。日常的に肩甲骨を後方に引き寄せるようにすることで、小胸筋の過度な緊張を防ぎます。

結論

小胸筋の短縮や硬さは、肩甲骨の異常な動きや肩の痛みの原因となる可能性があります。そのため、肩のリハビリテーションにおいて、小胸筋の柔軟性を改善することは重要な要素です。本記事で紹介した評価法や治療法を活用し、肩の正常な可動域と安定性を回復させましょう。

この知識は、肩のリハビリテーションを行う理学療法士にとって非常に役立つものであり、適切な評価と治療を行うことで、患者の回復をより効率的にサポートできるでしょう。

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