肩の動き、どうなってる?肩甲骨と筋肉の連携を徹底解説!
理学療法士として、患者さんの肩関節の評価や治療に携わる中で、「肩甲骨の動き、実はよくわからない」ということってありませんか?特に肩を前に上げる屈曲と横に上げる外転の違いで、肩甲骨や筋肉がどう動くのかは気になるところです。今回は、その違いを解き明かした研究を紹介します!
肩関節屈曲と外転時の肩甲骨運動の特徴と肩甲骨帯周囲筋との関連性
三浦雄一郎 森原徹 福島秀晃 鈴木俊明
研究の背景と目的
この研究の目的は、肩関節屈曲と外転での肩甲骨と鎖骨の動き、そして肩甲帯周囲筋(僧帽筋や前鋸筋)の働きに注目して、上肢を上げる際のメカニズムを解明すること。上肢を上げるときの肩甲骨の動きが、屈曲と外転でどう違うのか?その違いが筋肉の活動にどう影響しているのか?を詳しく調べています。
方法
対象となったのは、神経学的や整形外科学的に問題のない健常な男性8名(平均年齢30.3±7.1歳)。彼らに肩を屈曲または外転させ、その時の肩甲帯周囲筋の筋活動を表面筋電図で測定しました。測定した角度は30°、60°、90°、120°で、保持時間は5秒間。僧帽筋(上部・中部・下部線維)と前鋸筋に注目しています 。
肩甲骨の動き、屈曲と外転でどう違う?
研究結果では、屈曲と外転で肩甲骨の動きがかなり異なることが分かりました。
屈曲時:肩甲骨の下角が脊柱から遠ざかりながら、尾側(下方向)に移動。つまり、肩甲骨が背骨から離れていくように回っていきます。
外転時:逆に、肩甲骨の下角が脊柱に近づきながら尾側に移動します。外転の時は肩甲骨が脊柱に寄っていく感じです。
この違いは、肩関節屈曲と外転で肩甲骨が果たす役割が異なることを示しています。屈曲では肩甲骨が脊柱から遠ざかり、外転では近づく。この違いを知っておくと、患者さんの肩甲骨の動きや筋活動の異常を評価しやすくなりますよね 。
筋肉の活動はどう違う?
では、肩甲骨の動きを支える筋肉たちはどう働いているのでしょうか?屈曲と外転で筋活動がどう変わるか、詳しく見ていきましょう。
僧帽筋の働き
僧帽筋上部線維:屈曲と外転の両方で、角度が増すほど活動が増加しましたが、大きな差はありませんでした。ただし、外転60°では僧帽筋上部の筋活動が少し増えた傾向がありました。
僧帽筋中部線維:外転の際に顕著な活動の増加が見られました。特に60°~120°の間で、屈曲と比べて有意に筋活動が増加していました。この結果から、外転の動作では僧帽筋中部が肩甲骨の安定に大きく貢献していることが示されました 。
僧帽筋下部線維:屈曲では30°と60°で筋活動が増加し、90°以降は徐々に減少しました。一方、外転では90°から活動が増加し、120°では屈曲よりも顕著に筋活動が高くなりました。この結果は、屈曲時には肩甲骨を安定させるために働き、外転時には肩甲骨を脊柱に寄せる役割を果たしていることを示しています 。
前鋸筋の働き
前鋸筋:屈曲の全ての角度で外転よりも筋活動が高く、特に30°で有意な差がありました。これは、屈曲時に前鋸筋が肩甲骨の下角を脊柱から離す動きに関与していることを示しています。屈曲では肩甲骨の回旋に積極的に関与し、外転時にはその役割がやや少ないことがわかります 。
どんな臨床的意義がある?
この研究結果は、肩のリハビリに直結する非常に実用的な内容です。例えば、屈曲の動きに問題がある患者さんでは、肩甲骨の安定性を改善するために僧帽筋下部線維や前鋸筋をターゲットにした筋力強化が必要です。一方、外転が苦手な患者さんには、僧帽筋中部線維の強化が重要です。
また、肩関節の挙上動作がスムーズにいかない場合、このような肩甲骨や筋肉の運動パターンを正確に評価することで、問題の根本を探ることができるはずです。**どの筋肉が正しく働いていないのか?**を明確にできれば、治療プランの精度もぐっと上がります 。
臨床の現場で個々の患者さんに合った運動療法プログラムを作成するためには、患者ごとの個別評価が重要です。肩関節の動きと肩甲骨の連携は、日々の臨床でも欠かせない要素です。この研究を参考にして、肩甲骨の動きを評価し、的確なリハビリプランを作る際に役立ててみてください!