糖尿病性凍結肩患者に対する体外衝撃波治療の効果

はじめに

糖尿病(Diabetes Mellitus; DM)は、インスリンの産生や作用に問題が生じることで血糖値が上昇し、神経や筋肉、関節、血管など多くの臓器に進行性の損傷をもたらします。その中でも「凍結肩(Frozen Shoulder; FS)」は、肩関節包の炎症や線維化により、関節可動域の低下と肩の痛みを引き起こす疾患で、日常生活活動が著しく制限されることがあります。

近年、新しい物理療法として注目される「体外衝撃波治療(Extracorporeal Shock Wave Therapy; ESWT)」は、骨や結合組織の治癒を刺激し、疼痛の軽減や機能回復をもたらすとされています。本研究では、糖尿病性凍結肩患者に対するESWTの効果を評価し、従来の物理療法との比較を行いました。

方法

対象

本研究では、糖尿病歴10年以上で、6か月以上持続する凍結肩と診断された患者30名を対象としました(40~59歳)。患者は以下の2群にランダムに分けられました:
• グループA(ESWT群)
• ESWT(1回1200ショック、エネルギー密度0.2mJ/mm²)と運動療法を週2回、5週間実施。
• 肩関節の前面および後面にプローブを適用。
• グループB(従来療法群)
• 超音波治療(3MHz)と赤外線療法、運動療法を週2回、5週間実施。

評価方法
1. 疼痛および機能障害
• 「肩の疼痛および障害指数(Shoulder Pain and Disability Index; SPADI)」を使用。
2. 関節可動域(ROM)
• デジタルゴニオメーターを用いて屈曲、外転、外旋の可動域を測定。

結果
1. SPADIスコアの変化
• グループAのSPADIスコアは治療前6.86±0.91から治療後0.60±0.51に改善(改善率91.26%)。
• グループBは治療前6.6±1.05から治療後1.2±0.67に改善(改善率81.81%)。
2. 関節可動域(ROM)の改善
• グループA:屈曲57.95%、外転73.87%、外旋53.10%の改善。
• グループB:屈曲44.84%、外転61.34%、外旋51.20%の改善。
• いずれの指標もグループAが有意に優れていました(p<0.05)。

考察

ESWTは、肩関節の前後からの衝撃波刺激により、肩の癒着を緩和し、疼痛の軽減と可動域の回復を促進します。本研究の結果は、以下の研究と一致しています:
• Chenらの研究:ESWTは短期間で可動域や痛みを改善 。
• Parkらの研究:週2回、6週間のESWT治療でVASスコアおよび機能スコアが有意に改善 。

従来の物理療法と比較して、ESWTは短期間での効果が高く、非侵襲的な治療法として期待されます。

結論と提言

ESWTは糖尿病性凍結肩に対して効果的な治療法であり、従来の物理療法よりも痛みと障害を軽減し、肩関節の可動域を改善する可能性が高いです。本研究は、ESWTが凍結肩治療における有望な代替手段となることを示唆しています。さらなる研究には、サンプルサイズの拡大や非糖尿病患者への適用、長期的な追跡評価が求められます。

参考
論文のタイトルは:
“The Effect of Extracorporeal Shock Wave Therapy for Patients with Diabetic Frozen Shoulder”

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