高エネルギーおよび中エネルギーの衝撃波治療が2型糖尿病患者の凍結肩に与える短期的効果: パイロット試験の結果を解説

はじめに
凍結肩は、肩関節の痛みと可動域制限を特徴とする疾患で、日常生活の機能障害を引き起こします。特に2型糖尿病患者において、凍結肩の罹患率は高く、痛みが増大する傾向があります。この背景から、本研究は、2型糖尿病患者の凍結肩における**高エネルギー(hrESWT)および中エネルギー(mrESWT)**ラジアル衝撃波治療(rESWT)の短期的効果を検討しました。

研究概要

目的:
凍結肩患者における痛み、機能、可動域、および筋肉の力学的性質に対するrESWTの効果を、エネルギー量の違いによって比較する。

方法:
• 対象: 39名(凍結肩発症から3か月以上経過し、2型糖尿病を3年以上患っている患者)。
• デザイン: ランダム化比較試験。高エネルギー群(hrESWT)、中エネルギー群(mrESWT)、およびプラセボ群(prESWT)にランダムに割り付け。
• 介入:
• rESWTを週2回、6週間実施(計12セッション)。
• hrESWT: エネルギー密度0.25 mJ/mm²、mrESWT: 0.12 mJ/mm²、プラセボ: 0.00 mJ/mm²。
• 評価指標:
• 主要評価: 視覚的アナログスケール(VAS)による痛みの評価。
• 副次評価: 肩の痛みと障害指数(SPADI)、肩の能動的可動域(AROM)、筋肉の力学的性質(MyotonPRO)。

主な結果
1. 痛みの軽減
• 夜間痛: mrESWTがプラセボよりも有意に低下(VASスコアの変化: -5.27±2.37, P=0.002)。
• hrESWTでも有意な改善が見られるが、mrESWTと比較して優位性は見られなかった。
2. 肩の可動域(AROM)の改善
• 外旋および内旋: hrESWTが最も効果的(外旋: 32.22度の改善, P<0.001; 内旋: 25.86度の改善, P=0.015)。
• 屈曲および外転: hrESWTとmrESWTの両方で有意な改善が観察されたが、両者間に有意差はなし。
3. 筋肉の力学的性質
• 三角筋: mrESWTで顕著な改善(静止トーン: -2.60±1.51 Hz, スティフネス: -60.38±38.09 N/m, P<0.001)。
• 僧帽筋上部: hrESWTが効果的(静止トーン: -1.85±1.69 Hz, スティフネス: -36.27±38.65 N/m, P<0.005)。
4. 機能性(SPADIスコア)
• hrESWTおよびmrESWTともに有意な改善(SPADIスコアの変化: hrESWT -35.42±21.29, mrESWT -29.59±22.60, P<0.001)。

考察と臨床的意義
• 夜間痛: mrESWTが特に有効であり、夜間の痛み軽減を目的とした治療に適している。
• 肩関節の可動域: 内外旋の改善を重視する場合は、高エネルギーrESWTが推奨される。
• 筋肉の力学的改善: 三角筋には中エネルギー、僧帽筋には高エネルギーが有効。これにより、部位別および症状別の治療戦略が可能となる。

結論

rESWTは、2型糖尿病患者の凍結肩治療において短期的に有効な手段であることが示唆されました。
特に、中エネルギーrESWTは夜間痛と三角筋の改善に適しており、高エネルギーrESWTは肩の内外旋可動域および僧帽筋の改善に有効です。
これらの結果を基に、症状に応じた治療プランの設計が期待されます。

将来的な課題
• 長期的効果を評価するための大規模試験が必要。
• 他の評価手法(例: 超音波エラストグラフィー)を使用した検証。
• 痛み閾値測定を組み込むことで、より詳細な解析が可能となる。

本研究の結果は、糖尿病患者の凍結肩に対する非侵襲的治療法の選択肢を広げる一助となると考えられます。


参考
“Radial shock-wave therapy for frozen shoulder patients with type 2 diabetes mellitus: a pilot trial comparing two different energy levels”

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