ショックウェーブ療法と関節内コルチコステロイド注射の比較:糖尿病性凍結肩における管理効果の検討



概要

糖尿病性凍結肩(Adhesive Capsulitis, AC)は、糖尿病患者に多く見られる筋骨格系疾患の一つであり、肩の痛みと可動域の制限を伴う状態です。本研究では、ショックウェーブ療法(Shock Wave Therapy, SWT)と関節内コルチコステロイド注射の治療効果を比較し、併用される従来の理学療法との相互作用を評価しました。また、これらの治療法が血糖値に及ぼす影響についても調査を行いました。

背景

凍結肩は、関節包の炎症や線維化によって引き起こされ、日常生活における機能障害をもたらします。従来の治療法としては、コルチコステロイド注射が一般的ですが、副作用や糖尿病患者における血糖値の上昇リスクが指摘されています。一方、ショックウェーブ療法は、非侵襲的で副作用の少ない治療法として注目されています。

方法

研究デザイン
ランダム化比較試験として、50名の糖尿病性凍結肩患者を対象に行われました。対象者は以下の2群に分けられました:
• グループA:関節内コルチコステロイド注射 + 従来の理学療法
• グループB:ショックウェーブ療法(12セッション)+ 従来の理学療法

従来の理学療法には、徒手モビライゼーションとシンプルな運動療法が含まれています。

評価項目
1. 主な評価項目
• 肩痛・障害指数(SPADI)
• 肩の屈曲・外転可動域(ROM)
2. 副次的評価項目
• 血糖値三項目(空腹時血糖、食後血糖、HbA1c)

これらの評価は治療前、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後に実施されました。

結果

効果比較
• 肩の痛み・障害(SPADI)
両群ともに治療後に有意な改善が見られましたが、SWT群(グループB)の方がコルチコステロイド群(グループA)よりも大きな改善を示しました(3ヶ月後の差:p < 0.0001)。
• 可動域(ROM)
屈曲・外転の可動域はSWT群でより大きく改善し、特に1ヶ月目から有意差が確認されました(p < 0.001)。
• 血糖値
SWT群では血糖値三項目が有意に改善しました(HbA1c: p < 0.001)。一方、コルチコステロイド群では血糖値が上昇し、特に3ヶ月後に顕著でした。

考察

ショックウェーブ療法は、以下の点で優位性が確認されました:
1. 痛みと障害の軽減
音波による組織の血流促進や治癒反応の促進が、疼痛軽減と機能回復に寄与したと考えられます。
2. 血糖値の管理
SWTは非侵襲的で血糖値を安定させる可能性があり、糖尿病患者にとって安全な治療法と言えます。

一方、コルチコステロイド注射は即効性があるものの、血糖値上昇や他の副作用のリスクが確認されました。

結論

ショックウェーブ療法は、糖尿病性凍結肩に対する安全かつ効果的な治療法であり、関節内コルチコステロイド注射よりも持続的な改善効果を示しました。また、糖尿病患者における血糖管理にも適しており、今後の治療選択肢として有望です。

参考文献
Elerian, A.E., et al. “Effectiveness of Shock Wave Therapy versus Intra-Articular Corticosteroid Injection in Diabetic Frozen Shoulder Patients’ Management: Randomized Controlled Trial.” Applied Sciences, 2021.  

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