製品やサービスの多くの新規性とはプロセスの改善の度合いによる
世の中に存在する多くの製品やサービスは、既存のプロセスの改善から生まれています。多くの場合、既存のやり方より「速く」「安く」「便利に」といった改善が積み重なって新たな価値が提供されます。そして、その改善の度合いが大きければ、私たちはそれを「イノベーション」と呼びます。
プロセス改善の度合いが大きければイノベーションとなる
既存のプロセスをほんの少し改善しただけでは、大きなインパクトは生まれません。しかし、劇的な改善、例えば、従来の数倍の速度で処理できるようになったり、コストを1/10に削減できたりするような変化は、市場に大きなインパクトを与え、イノベーションと認識されます。
例えば、インターネットの登場は、情報の伝達プロセスを劇的に改善しました。手紙やFAXに比べて圧倒的に速く、安く、大量の情報をやり取りできるようになった結果、私たちの生活は大きく変化しました。これはまさに、プロセス改善がイノベーションに昇華した例と言えるでしょう。
AmazonやNetflix、Uberなど世の中の製品やサービスで新しいと言われてきたものの多くは「達成したい目的に対して、ユーザー側や提供側が辿るプロセスを改善している」といえます。
プロセス改善に入らない製品・サービス
もちろん、全ての製品やサービスがプロセスの改善から生まれるわけではありません。例えば、芸術作品やエンターテイメントなどは、必ずしも既存のプロセスを改善するものではありません。これらは、人間の感性や感情に訴えかけることで価値を提供し、既存の枠組みに囚われない新しい表現を生み出します。
しかし、このような製品・サービスでさえも、制作プロセスや提供プロセスにおいては、様々な改善が行われています。デジタル技術の活用により、音楽制作や映画制作は効率化され、ストリーミングサービスによって、コンテンツへのアクセスは劇的に向上しました。
ディープテックという1つのプロセス改善にかけるビジネス
注目を集めている「ディープテック」も、ある種のプロセス改善と言えるでしょう。例えば「温暖化阻止」という目的に対して、二酸化炭素を減らすという1つのプロセスがあり、それには排出を減らすのか、そもそも排出されたものを酸素に変えるのか、などの複数の選択できる方法(サブプロセス)があります。そのサブプロセスを効率化するために自然科学で研究された技術が用いられます。
ディープテックを元にしたビジネス成立の難しさは時間とコストをかけてサブプロセスの効率化を進めたとしても、目的を達成するための他のプロセスやサブプロセスが出てくる可能性が多分にあることです。SaaS的なビジネスであれば達成手段であるプロダクトのピボットが容易ですが、ディープテックは基幹技術ありきなため、ピボットしづらいのです。
ビジネス構築において気をつけるべきこと
そういった現状を見るに、ビジネスを構築する際には、以下の点に注意することが重要かと思います。
真の課題を見つける:顧客や市場が抱える真の課題を理解し、その課題を解決するプロセスを明確にする必要があります。
競合優位性を築く:競合他社との差別化を図り、独自の価値を提供する必要があります。技術的な優位性、コスト優位性、ブランド力など、様々な競合優位性があります。
持続可能なビジネスモデルを構築する:一時的な成功ではなく、長期的に収益を上げられるビジネスモデルを構築する必要があります。
変化への対応:市場や顧客のニーズは常に変化するため、柔軟に変化に対応できる体制を構築することが重要です。
プロセス改善は、ビジネスにおけるイノベーションの源泉と考えられます。既存のプロセスを分析し、改善点を洗い出すことで、新たなビジネスチャンスを見つけることができるのかなと思います。そういう意味では、常に改善を意識し、変化への対応を怠らないことが、ビジネスの種を見つける鍛錬になるのかと思います。