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性風俗関連特殊営業の規制

今回は、とある界隈向けに執筆します。
性風俗関連特殊営業について、解説していきます。



1 届出制の意味

性風俗関連特殊営業は、届出制です。⇚ここが最大のポイント

キャバクラ、パチンコ店も風俗業ではあるが、こちらは、許可制です。

この違いのポイントとは、

国が認めているか(許可)
認めることはできないが管理把握するためか(届出)

というところにあります。

許可制とは、自由にすると弊害がある活動を一定の要件を具備した場合には、認めるという規制です。
運転免許、猟銃所持も法律を守れて、一定の技能を有することで認められます。
キャバクラやパチンコ店も一定の要件を満たすことを条件に営業を認めるという法制度になっています。(認めても善良な風俗と清浄な風俗環境をそれほど害さないということだと思います。)

しかし、性風俗関連特殊営業は、国が認めるわけにはいきません。(許可は出せないということです。)
何故なら、相当いかがわしい営業形態だからです。基本的に善良な風俗と清浄な風俗環境を害するとされています。
しかし、国が全く関与しないわけにもいかないので、営業する場合には、≪必ず届出をしてね!≫という建付けにしているのです。
このような制度になったのは、「既得権」が影響しています。
本来は、禁止したかった営業形態だったのですが、新しく規制する前から営業をしていた者たちへの配慮として、その営業を存続させてあげているだけに過ぎません。

そのため、いつ規制されてもおかしくない(甘受しなければならない)という状況なのです。

2 性風俗関連特殊営業の種類

(1) 店舗型性風俗特殊営業

ア 個室付特殊浴場(ソープランド等)

イ 店舗型ファッションヘルス営業
  〇〇エステと呼ばれる業態。

ウ ストリップ劇場等

エ モーテル・ラブホテル等

オ アダルトショップ等
  いわゆる、大人のおもちゃ屋さん。

カ 出会い系喫茶営業等
  売春や援助交際を目的とする女性と出会う場の提供。
  交渉成立でホテル等へ移動。
  相席居酒屋は、その場で飲み続ける点で異なります。

(2) 無店舗型性風俗特殊営業

ア 派遣型ファッションヘルス営業
  デリヘル、ホテヘル。

イ アダルトビデオ等通信販売営業

(3) 映像送信型性風俗特殊営業

(4) 店舗型電話異性紹介営業(テレホンクラブ等)

(5) 無店舗型電話異性紹介営業

(6) 接客業務受託営業

3 規制

(1) 店舗型性風俗特殊営業の規制概要
ア 営業等の届出
     当該営業所の所在地を管轄する公安委員会に届出書を提出。

イ 広告宣伝の禁止
  前届出書も提出者は届出外の営業形態の広告宣伝はしてはならない。
  届出書を提出しない者は、そもそも広告宣伝はしてはならない。

ウ 禁止区域等
  一定の施設(学校や公園)の周囲200メートルの区域内は営業禁止。
  条例で定めた地域内での営業禁止。

エ 営業時間の制限
  深夜における営業時間を制限。

オ 制限地域等における広告宣伝の禁止

カ 接客従業員に対する拘束的行為の規則

キ 禁止行為
  客引き、道路で立ちふさがり、つきまとう。
  18歳未満の者を客に接する業務に従事させる。
  18歳未満の者を営業所に立ち入らせること。
  20歳未満の者に酒類又はたばこを提供すること。

(2) 無店舗型性風俗特殊営業の規制概要
ア 営業等の届出

イ 広告宣伝の禁止

ウ 接客従業員に対する拘束的行為の規則

4 既得権営業と歴史

(1) 歴史
第二次世界大戦後、連合軍の指示により、日本の公娼制度が廃止された際に、従来の遊郭地帯や私娼街を地図上で赤線や青線で区画しました。

赤線
特殊飲食店と称され、売春婦を置いて売春が行われていた地域を指す。
青線
裏口買春が行われていた私娼街を指す。

公娼制度廃止に伴い、売春は地下に潜り込み、特殊飲食店という形で存続。
これらの店が集中していた地域が赤線地帯です。
その後、1957年に売春防止法が施行され、売春が違法となります。
しかし、この時点で赤線・青線は完全に消滅せず、長い間日本の社会問題となる。(既得権として温存)

(2) 既得権
規制が施行される前から既に営業を開始していた事業者に対していきなり営業を禁止してしまうと、その事業者の権利を侵害することなります。
そのため、既存の事業者を保護するために、既得権が認められるようになります。
「既得権」営業は、法改正時の事業者一代に限り、現状のままでの営業が認められるものであり、譲渡や相続は認められない。
増築、改築や大規模な改修などを行い、施設の同一性が保たれなくなった場合には、その時点で「既得権」は消滅する。
なお、事業者が個人の場合には、廃業や死亡により、その権利は消滅する。しかし、事業者が法人であった場合には、その法人が存続する限り、「既得権」は存続する。

(3) まとめ
ストリップ劇場の建物がぼろい理由は、これです。
つまり、建物の大幅な改築は、既得権を消滅させることになりできないのです。
事業者が人であれば、寿命で既得権が消滅します。
事業者が法人の場合は、寿命がありませんが、建物が火災で焼失したり、老朽化により取り壊すことになれば既得権が消滅します。

5 偶然システムによる脱法

「既得権」営業は、その場所でのこれまで通りの営業を認めるにすぎません。
そのため「既得権」というだけでは、売春が合法になるわけではありません。
しかし、ソープランドは本番行為がある場所であると広く認知されていると思います。
それでは、売春防止法が施行されているにも関わらず、なぜソープランドが存続できているのでしょうか。

それは、サービス提供時に、偶然「愛」が生まれるからです。(ということにしているからです。)

本番以外の卑猥なサービスが料金の発生する部分で、その途中偶然「愛」が生まれて、本番行為に至るという建付けなのです。
本番行為は「愛」による行為なので、本番行為ではお金はもらっていないという論理です。

これは、どこかでみた構造だと思いませんか?
そう、パチンコ店の近くになぜか金の延べ棒を買い取る景品交換所があるという構造(3店方式)と同じです。(法律回避)
パチンコ店が遊客が獲得した出玉を金銭に換金しているわけではなく、遊客に対して出玉と景品を交換します。
その景品を景品交換所に持ち込んで、買い取ってもらうことで遊客は、景品を現金化します。
景品交換所は、その買い取った景品は、景品問屋に買い取ってもらいます。
そして、パチンコ店は景品問屋から再び景品を仕入れます。

本当に法律って建前なんですよね。

6  まとめ

現在性風俗関連特殊営業は、法律で新規営業は、不可能な状態です。
公共施設等からの距離規制とゾーニング(地域)規制により、新規出店は困難です。

法律の規制による、激変緩和措置として認められた「既得権」営業ができる店舗が残るのみです。

その「既得権」営業も、営業者の死亡・消滅(法人の場合)、店舗の老朽化、火災等の災害による焼失により終了することになります。
一代、現建物限りのためです。

そのため、いづれはなくなりゆくものなのです。


皆様は、この儚い性風俗関連特殊営業の実態をどのように考えますでしょうか?

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