#地域おこし 盛り上げればいいってもんじゃない
就職のため、私は今年の3月末から、大学のあった長野県から新潟県の田舎に引っ越してきた。
今月、地域にあるゲストハウスのオーナーと一緒に食事をする機会があったのだが、その時に話した内容が非常に印象的だったため、このnoteに記しておく。
私がオーナーへ、地域の「山菜」を活かして、地域起こしのようなビジネスモデルをここで興せば面白いんじゃないか、と提案した時だ。
オーナーは、この地域で採れる山菜の魅力をじゅうぶんに熱く語ってくれた後に、「だけどね....」と続けた。
オーナー「地域の人から頼まれて『山菜パトロール』をやってるから、山菜を求めて県外からやってきた人とよく話すんだけど。このあたりの地域に生える山菜ってのは、どこのものよりも肉厚で高品質だから、山菜に詳しい人の中ではなかなか有名らしいんだよね。」
「今の時代、昔とは比べものにならないほど情報伝達のスピードが桁違いに早い。SNSなんかで発信すると、あっという間にバーっと広まっちゃう。こんな何もない田舎に急に観光客が押し寄せて来たりしたら、この地域の人たちの暮らしはどうなるんだろ。変化は徐々に起こすべきであって、急激に環境を変化させるのはあんまり好きじゃないかも。どのみち発信なんかしなくっても、アンテナ立ってる人たちは、山菜を求めてこの地域にやってくる。」
いわゆる、オーバーツーリズム(観光公害)の懸念である。
オーナーも移住当初は、この地域の知られざる魅力を発信して、どんどん外部から人を呼び込みたい、と思ったことがあったらしい。
だけど、この地域に長く住み、地域を愛していく中で、ほどよい穴場感というものを大切にするようになった。
繰り返しになるが、今の時代、情報の伝達速度は一瞬にして、地方にさえあっという間に人が押し寄せることも大いにある。何もない田舎に、急に観光客が押し寄せ、ゴミ問題や交通渋滞など多くの課題を生んでしまうこともある。
新潟は十日町エリアの、「大地の芸術祭」がいい例らしい。
地域の魅力、それは、大勢に知らせる必要もなければ、自分たちの中だけで大事大事と匿う必要もない。
もし、地域の魅力を発信したいと思うなら、ここに住む人たちの暮らしのことを思いながら、急激な変化だけは起こさないようにしようと思った。
今まで知られてこなかった地域の魅力には、脈々と人々の暮らしの中でひっそりと守られ続けてきたっていう事実がある、ってことを忘れずにいたい。