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「園長の声に子どもが固まる」— 変えられないものと、できること #197

「園長の声に子どもが固まるんですよね……」

とある保育園に勤務する20代半ばの知人がこう話した。

40代の男性園長は、単に子どもに声をかけているつもりのようなのだが、特定の子に対して大きな声で突然名前を呼ぶことが多いそうだ。
彼自身は「気にかけてあげている」と思っているのかもしれないが、声をかけられた子どもは萎縮し、周りも驚く。そしてそんな園長先生にもう慣れている子どももいるとのこと。

彼女は、「なぜそんなことをするのか理解できない」と言った。
私にもその園長の真意はわからない。(理解する必要もないとさえ思う)
これまでに幾度となく彼の話を聞いたことがあり、私自身も直接対話したことがあるため、彼の性格なども踏まえて考えると、おそらく、人との距離感を取るのが苦手なのだろう。

園において、誰も指摘しない、という状況も、単に園長が「注意されにくい立場」だからというだけではなく、職場の雰囲気そのものにも問題がありそうだ。

その職場の「空気」が、
・誰も上司に意見しないのが当たり前
・過去に指摘した人が嫌な思いをしている
・「どうせ言っても変わらない」と皆が思っている

こうした状態が続くと、「違和感を感じても言わないほうがいい」という暗黙のルールができてしまう。
いわゆる心理的安全性が低い職場の特徴だといえるだろう。
思ったことは言いたい私には、息が詰まりそうな職場だ。


話しをもとに戻すと、彼女は園長の言動に違和感を感じて、そのモヤモヤをスッキリさせたくて私のところまでわざわざ話にきたのだ。

違和感を抱くのは、自分が大切にしている証

彼女がわざわざ相談までしようとしたのは、彼女自身が、普段から子どもたちへの声のかけ方や話し方を意識しているからこそなのだろう。

子どもたちがザワザワしているとき、自分に注目してほしいとき、どう伝えるのがいいのか。
新卒の時期を過ぎて、慣れてはきたけれど、すぐに悩んでしまうし、まだまだ試行錯誤の毎日なのだ。
自分に余裕がないと、つい喋り方が雑になってしまうことはないか。
そのせいで、子どもが誤解したり、傷ついてしまったりしないだろうか。

彼女は日頃からこうしたことを意識しているからこそ、「そんな言い方を何故するの?」と疑問を持ち、子どもの気持ちにも寄り添えたのだろう。


変えられないものより、自分にできることを
私は彼女に次のように話した。
「それは、あなたが仕事をする上で話し方や伝え方を大切にできている証拠だよ。園長が変わるのは難しいだろうから、子どもが安心できるようにフォローをしてあげて。」

職場の雰囲気や上司の言動を変えるのは簡単なことではない。
特に苦手な上司と一緒に仕事をすることになると、どうしてもネガティブなことばかりが目に入り、気になってしまうのも人間だから仕方がない。

それでも、視点を少しずらすことが出来たら、見える世界も、モチベーションも変わってくる。

「違和感を抱く」ということは、自分が大切にしていることに気づくチャンスでもある。

その視点を大事にしながら、今の自分にできることを見つけて丁寧に実践していくことが、彼女自身の成長につながっていくのだろう。



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