不可解な子
みちるちゃんと言う子がいた。とても活発で、おふざけもお勉強もスポーツも何でもできて、男女問わず人気がある子だった。
いじめてると思えば、庇ったり、この子の真意はどこにあるのだろうといつも不思議に見えていた。真面目に話してたと思うと「なんてねー」とおちゃらけたり、男子とも対等にやり合う度胸も持っていた。
学級長にはならなかったけど、何らかの委員には必ず押される子。誰もが一目おく存在。
嫌いではなかったけど、みちるちゃんのコロコロ変わる変化に私はいつもついていけなかった。
そのせいか、いつも心がざわざわしていた。
もちろん、いじめられたことも、からかわれたこともない。けれど、どうしたら良いかわからなくなったのだ。
それは私がADHDだったからだろう。彼女は正論を言っていたと思えば、冗談でにごし、いじめていたと思えば、いじめる輩に真っ向から対峙して庇っていた。
正論が正しいに決まってるし、いじめはいけないに決まってる。
けれど、正論は疎ましく融通がきかなくて、けむたいものだ。それを最後に冗談で笑いに変えてしまうという、忍術みたいな方法を彼女は使うのだ。
ADHDは複数のルールがあると優先順位がなかなか決められない。だから、彼女の最後の冗談で訳がわからなくなってしまうのだ。それがざわざわの原因だとわかったのは、50をすぎて、ADHDと診断を受けてから。
今は自然豊かな街で、学校の先生をやっているらしい。
決して嫌いではなかったみちるちゃん。
今会っても、私はざわざわするんだろうか?