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昔、ピーターラビットに会いにいったお話③
1991年の夏、イギリス湖水地方のニア・ソーリー村を訪れた時の旅行記です。
前回のお話はこちら。
帰り道は、牧場の真ん中を横切っているフットパスを歩いて行きました。
一応、公共の道とはいえ、いろんな人が歩いたために、自然にできたといった感じで、途中で途切れてなくなったかと思うと、また続くという具合です。
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フットパスの入り口は実に目立たないので、私のような、のん気な旅行者でないと、気づかず通り過ぎてしまうでしょう。
でも、こんなに素敵な小道を見逃してしまうのは、あまりに勿体ない!
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小道沿いには、小川がポコポコと静かに流れています。それに沿って、しばらくは歩いてゆきます。
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右側には、こんもりと茂った森。左側には、牧場が広がっています。
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途中、コブのような小さな丘があり、一組のカップルが昼寝をしていました。
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その横をぐるりと囘るように、小道は続きます。
遠くに、小さな教会が見えてきました。
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それから、小川にかかる小さな丸木橋を渡ると、目の前にだだっ広い牧場が広がっています。
なぜかここで、フットパスが途切れて、どこへ行ったらよいのか、わからなくなります。
でも、ここでうろたえてはいけません。小道は目に見えないけれど、確かに存在しています。
向こうに見える教会を目指して、ひたすら真っすぐ前進します。
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すぐ近くで、牛がウロウロしていますが、チラッと見られるだけですから、気にすることはありません。
(注)牛の落とし物を踏まないよう、気をつけよう。
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いったん、フットパスの出口から歩道へ出ます。教会の脇を通り、ちょっと歩くと、すぐまたフットパスの入り口があるので、そこからまた牧場の小道を歩いて行きます。
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教会の中も見てみたかったのですが、残念ながら開いていませんでした。
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ここまでくれば、フットパスももうすぐ終わりです。木の扉を開けて、坂を登っていきます。
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坂道の途中でふり返ってみると、先ほどの教会が、もうあんなに小さくなっています。
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ここで、わざとフットパスをはずれて、丘のてっぺんまで登ってみました。
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そこから、眼下に広がる景色の美しさといったら……言葉になりません。
とても写真では撮りきれないです。
この感動は、実際に自分の足で大地を踏みしめ、目で見、肌に風を感じた者にしか、わからないでしょう。
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素敵なフットパスに別れを告げ、扉を閉めます。体の中は、満足感でいっぱい。
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いつかまた、この場所に立ちたいと、心から思いました。
きっとその時も、今と同じまま、何も変わらないでいるのでしょうね。
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こんなところにも、人が生活しているなんて、なんだか不思議な気がします。
毎日、あの素晴らしい景色が見られるなんて、羨ましい限り。
もちろん、実際に生活していたら、いろいろ苦労も尽きないでしょうが…。
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テクテク…
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ボーネスの町に戻ってくると、とりあえずお茶を飲んで、疲れた足を休めました。
それから、たまたま見つけた「ビアトリクス・ポターの世界」展に、あまり期待もせずに入ってみました。
ところが、これが予想外に素敵でした。
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まず、小さな部屋に入り、ポターの生涯などを簡単にまとめた映像を見ました。(日本語の説明サービスもあったので、内容はバッチリわかりました。)
それが終わると、入口と反対側にあったドアがさっと開いたので、「なんだ、もう終わりか」と、ちょっと物足りない気分で外に出ました。
が、実はここからが、このポター展のメインだったのです。
なんと、絵本に忠実に作られた人形や家具、風景などの、ミニチュア・ワールドが展開されていたのです。それも、安っぽさのない、かなり本格的なもの。
コーナーごとに、絵本の題名が書かれていました。通路も、散歩道のようにくねくね曲がっていて、とっても楽しいのです。
↓(写真がうまく撮れず、ボヤけていますが、雰囲気だけでも楽しんでくださいね。
展覧会のミニパンフレットと交互に、載せています。)
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ピーターの服が…
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特に気に入ったのは、ネズミたちの世界。
木の洞や、家の床下などに隙間があって、そこから覗くと、小さなネズミたちが生活しているのが見えるのです。
もちろんポターの描いたネズミですから、洋服も着ていれば、ナイフとフォークで食事をしてたりするのですが、なんだかまるで本物みたいなのです。
小さすぎて、写真には撮れなかったのが残念。
さて。
今夜は、自分で見て、気に入ったところに泊まることにしましょう。
さすがに観光地だけあって、ホテルやB&B(ベッド&ブレックファースト)がたくさん。でも、「わぁ、ステキ」と思うところは、やっぱり人気が高いらしく、No Vacancy(満室)になっています。
小さな普通の家のようなB&Bがいいなぁと思ってたのですが、そういうところは部屋数も少ないので、やっぱりNo Vacancy。あっても、シングルはもうない、と言われたところもありました。
そして、流れ流れて、たどり着いたのはウィンダミアのホテル。
ここでは、名前など何も書かせたりせず、いきなり部屋に案内して鍵もくれるという、良心的な人の良いホテルで、「もし、私が悪い人だったらどうするの?」と、思ってしまいました。
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実は、前の日に泊まったところでは、ベッドの横に簡易シャワー室が置いてあるという、信じられない造りをしていたのですが、今回は、ちゃんと別室になっていたので安心。
最初は、ちょうど屋根が傾斜している角の部屋なので、天井が斜めに下がっているし、窓は小さな天窓ひとつだし、ちょっと息苦しい感じだなぁと思いました。
ところが、ずっといると、なんだか妙に落ち着いてくつろげる、不思議な部屋でした。
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朝のウィンダミア
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帰りに、ちょっとしたハプニング。
列車がちょうど来たので、急いで乗りこむと、そこはA席。そこで、慌てて隣の車両に移りました。
ところが、そこはタバコを吸ってよい所だったので、空気はよどんでいるし、前に座っている体の大きなおばさんも、なんだか怖そうな、あやしい感じ。そこで、A席に戻っていってしまいました。
予約席でもないし、まぁ、いいかと座っていると、車掌が回ってきて、ちゃっかり£3取られてしまいました。(当たり前か…)
まぁ、一度くらい英国で1等車に乗るのも経験のうちと、思いきりくつろぎました。
さすがA席はゆったりしていて、居心地もよく、きれい。人も少ないし、静かです。
£3しか違わないなら、長旅の時はA席の方がお得なのかも。
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これにて、この旅はおしまい。
元々この旅行記は、自分と家族のためだけに作ったアルバムでした。
まさかウン十年後に、こんな形で世間にさらすことになろうとは…(笑)
旅行中は、カメラやスマホばかり覗いてないで、自分の目で見て、頭の中だけに記憶を留めたい、という方もいるでしょう。
でも私は、写真を撮るのが大好きだし、思い出を文章に残すのも楽しい。
なんなら、旅行の最中に、すでにアルバムの構成を考えてる時もあります(笑)
この旅も、記録として残してなかったら、すっかり記憶から抜け落ち、忘れさられていたようなことが沢山ありました。
今のように情報も全然なく、ニア・ソーリーの地図もないままカンだけを頼りに歩いて、よくヒル・トップまでたどり着いたなぁと、今さらのように思います。
あんまり昔のことなので、旅行記として実用性は全く無いと思いますが(笑)
いっしょにタイムトリップして、旅したような気分を味わっていただけたのなら、嬉しいです。
今も、やっているみたいですよ↓