自分の歯列矯正に失敗した歯医者の私が20年かかってわかったこと
治療でかえって体調不良に・・・
これが私の25歳の時の歯並びです。
上下の前歯が噛み合っていないので口が閉じにくく、寝ているときに口呼吸になり喉が乾燥したり食事しにくかったりと不便だったので
歯医者になったこともあり、思い切って歯列矯正治療を始めました。
将来の健康と歯医者としていい経験になると信じて辛い治療に耐えました。
治療後の歯並びは一見整っているように見えます。
しかし実際は咬合(噛み合わせ)の違和感に苦しみ、酷い体調不良に陥ってしまいました。
食事が苦痛というだけでなく、首・肩・腰のコリ、全身倦怠感、睡眠障害など日常生活に大きく支障をきたしているにもかかわらず、どうすることもできない・・・
私自身歯医者なのにどうしていいのかわからない・・・
八方塞がりのまま長いこと苦しみました。
歯並びが悪くなる原因
日本の歯科医療は虫歯や歯周病などの細菌感染が原因の疾患の治療は進んでいますが、歯並びのような機能障害への対応は遅れています。
虫歯や歯周病の原因はプラーク(細菌)であり、それを除去することが治療の基本ということはよく知られています。
では、歯並びが悪くなる原因は何か?
上下のアゴの発育不全やアゴと歯の大きさの不調和などの先天性の原因と、口呼吸、指しゃぶりなどの習癖が後天性の原因として挙げられますが、それ以外にもふだん何気なく行っている生活習慣が原因となることはほとんど知られていません。
歯並びが悪くなった原因をつきとめないで治療してしまう、ということが
日本の歯科医療では普通に行われてしまっています。
私の場合もそうでした。
悪くなった原因を考えずに治療しても上手くいかないし、一時は良くなったとしてもまた悪くなるのです。
どうして自分の治療が上手くいかなかったのかずっと謎でしたが、46歳で再治療を受けてようやく失敗の原因がわかりました。
もっと早くに気付いていれば20年も苦しまなくて済んだのに・・・と後悔しきりです。
患者としては辛い年月でしたが、歯医者としては多くの学びがありました。
まとめましたので参考にしていただければ幸いです。
”昼寝で出っ歯に!?~私の歯並び苦行記~”
危険な姿勢
まさか机につっ伏して昼寝することで顔が歪み、顎関節症になって歯並びが悪くなっていたなんて思いもしないことでした。
「顔・からだ バランスケア」筒井照子先生著(医歯薬出版株式会社)に紹介されている患者さんは、私と同じように机にうつ伏せ、腕枕で長時間寝る癖がありました。
矯正治療をしたことで、酷い咬合違和感と体調不良に悩まされていましたが、これはうつ伏せ寝で歪んだ上アゴに合わせて矯正をしたことが問題だったのです。
悪くしないことが何より大切
私もこの患者さんも、矯正治療前の歯並びが悪いときは悪いなりにバランスを保っていましたが、悪くなった原因を考えない治療によってバランスを崩し、酷い体調不良に陥ってしまいました。
矯正治療はとても怖いのです。
歯医者の私でも失敗しました。
治療しないで済むように悪くしないことが何より大切です。
いい歯のために
歯科界の尽力によって日本人の口腔衛生意識が高まり、高齢になっても多くの歯が残っている人が増えてきました。
しかし虫歯でも歯周病でもない歯がたくさんあっても、歯並びが悪いと健康とは言えません。
「いい歯」のためには歯ブラシなどの衛生ケアだけでなく、
歯並びを悪くしないように生活習慣に気を付ける意識付けも広まっていくことを願っています。