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生命を扱うということ

おはようございます
kumapon'sでございます

とってもお久しぶりのnoteとなってしまいましたが、皆さんお元気ですか
わたしは元気です

さて、朝から物々しいタイトルではありますが語ります

わたしの家は祖父の代から続く酪農家で今は二代目である父が酪農業を営んでいます
そのおかげでわたしは「酪農家の娘」としてアイス屋さんを始めることができました

キッチンかーでの販売の時にお話しさせてもらいうこともありましたが、文章で残したくなったのでまとまらないかもしれませんが、お付き合いください

わたしは酪農家の娘として生まれましたが、恥ずかしいことに自分のアイス屋さんを始めようと決めるまで家の酪農の仕事をしたことがありませんでした
これにはいくつか理由があって、一つは父が稼業を継がせる気がなかったことともう一つは推測ですがわたしが女だったからではないかと思っています
以前の記事でも少し触れましたが、女はいつか嫁に行くという感覚もあったと思います時代錯誤な気はしますがわたしもそれが普通だと思っていたし、例外なくそうなると思っていました
時は経ち、わたしもあれから色々あったよ 人生いろいろ島倉千代子ということで、実家に帰ってきました
そのタイミングで家の牛乳を使って何かにしたい!という思いを強くしてたくさんの人に背中を押してもらって今に至ります
家の牛乳を使って、六次産業化を!とたいそうなことを言いつつ牛を飼ったことがないのは説得力がなさすぎるし、将来的なことを考えれば牛の仕事を覚えるのは必須だったので、アイス屋さんが始まる前に3ヶ月ほど家の牛舎で武者修行に励みました
酪農の仕事は365日毎朝毎晩です
お正月休みもお盆休みもありません
わたしが牛舎に通ったのはたったの3ヶ月です
これを祖父や両親はずっと何年も何年も続けてきたのかと思うと、ありがたすぎるのと改めて酪農の大変さを身に染みて感じました

酪農の仕事を一通り教えてもらって、父母のどちらかがお休みしたい時には代打で仕事ができる程度には働けるようになりました

そんな折、一頭の牛の具合が悪くなります
生き物なので元気な時もあればもちろん体調不良もあります
その牛ちゃん(わかりやすくするためにミルクちゃんと呼びます)は産後に調子が悪くなって立てなくなってしまいました
あらゆる手を尽くして回復して立てるようになる子もいればそのまま廃用(乳牛の役割を終えて食用になります)になることもあります
酪農家としては1日でも長く乳牛として活躍してほしいのが本音です
件のミルクちゃんは、何日もかけて回復を待ちましたがそのまま廃用になってしまいました

ミルクちゃんの最後の日、父に牛舎に呼ばれました
結局ミルクちゃんは自力で立つことができなくなってしまい、最終的にはワイヤーをかけて機械で引っ張って牛舎から卒業して行きました
本当に忘れられないのですが、地域の小学校にお仕事体験の講師にいく日の朝のことでした
わたしがその時任されたのはミルクちゃんを牛舎に繋いでいるロープを切る仕事でした
一番ミルクちゃんに近いところで、ロープを切って、ミルクちゃんがゆっくり牛舎から離れていくのを見るのは本当に辛くて、父にバレないように(多分バレてる)泣きました
今も思い出しながら皆さんにバレないように(多分バレてる)泣いています

わたしにとってミルクちゃんとの出来事は、きっと一生忘れることはないと思います

父がいつか、同じように自力で立てなくなってしまった牛を見送った日に
「かわいそうなことしちまったな…」
と、ボソッと呟いたことがありました
理想は自力で歩いて牛舎から出られるときに卒業させること
でも、酪農家である以上少しでも1日でも長く乳牛として活躍させたいのです
その判断をする父のその呟きも、わたしの中で忘れられない一言になっています

今、今日現在ミルクちゃんと同じように自力で立てなくなってしまった子がいます
今朝も立てるようにサポートするのに力がいるので牛舎に手伝いに行ってきました
なんとか立ち上げることができて草をむしゃむしゃ食べていたので、いっぱい食べてなんとか回復してほしいと願いながら、その勢いでnoteを書いています

酪農や畜産は生命を扱います
乳牛だけでなく、肉牛や豚、鶏、羊など動物を扱う業種というのは本当に大変で(じゃあ食べなきゃいいじゃん、という食の多様化についてはまた別の機会に…!)体力的にはもちろんですが、メンタル的にも結構きます
それでもうちのような酪農家が酪農家を続けていくのは、美味しくて豊かな食生活を送るためです
人間だけが豊かであればいい、ということではなく、わたしの家の酪農、ということで言えば、kumapon's創業当時から「牛もハッピー、人間もハッピー」を目指しています
牛がハッピーかどうかなんて正直分かりません
ですが、少なくとも快か不快かは環境によってわかります
うちの牛舎は祖父が建てたもので既に50年以上経っています
わたしの目標はkumapon'sの事業で得た利益で牛舎の改築をすることです
人間の労働環境のストレスが減れば自ずと牛たちの環境も改善されてくると思うのです牛たちは大事な社員であり仲間だとわたしは思います
酪農家さんによって考え方捉え方は様々なので、何が正解とかどの酪農家さんがいいとか悪いとかではないと思っています

ただ一つ、酪農に関わるわたしが思う産業動物に対するリスペクトは
「美味しく残さずいただく」
これに尽きるのではないかと思います
一番の不幸は、食べられずに捨てられることだと思います
これは酪農に限った話ではなく、全ての生産物にも言えることで、生産物は必ず誰かの手を通して私たちのもとに届きます

わたしは本当にありがたいことに、自分の家で搾乳されるところから工場でアイスに加工するところ、そして目の前のお客さまに提供するところまで、自分の目で見届けることができます
「アイス、美味しかったよ」
この言葉をいただけることが、本当に嬉しいし、アイス屋さんという方法でいろんな方にうちの牛乳を口にしてもらうことができて、こんなに嬉しいことはありません
これからもたくさんの方にアイスを食べてもらえるように、牛飼いもアイス屋さんも頑張っていこうと改めて思った朝でした

長くなってしまいましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました
またnoteでお会いしましょう
(こんなに久しぶりにならないように更新します反省)

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