振り返れば房総半島
以前、伊豆半島の南東部にある片瀬白田に借りた温泉付きトランクルーム「アジト」のお話をさせていただいた。
神田川俊郎氏がボクの中に降りてきて、「ちょっとの工夫」により3つの課題が解決できる最善案を教えてくれたのだ。
実際には、アパートの敷金礼金、伊豆までの引越費用、それから交通費がかかった。
それを差し引いても、青い空と蒼い海、目に鮮やかな深緑の山と澄んだ空気。家では温泉三昧。
新鮮で美味しくて安い鮮魚や野菜たちに軍配が挙がった。
どこをとっても申し分のないリラックスできてリフレッシュできる場所なのだ。
ただ、年数が経つにつれてボディブローのように効いてきたことがある。
車で片道3時間という移動時間がボクの動きを鈍らせてきた。
見るもの全てが新鮮な頃の片道3時間と、何年も過ごし新鮮さが薄れてきた3時間は、同じ時間であっても感じ方は全く違ってきた。
アジトで過ごす申し分のない幸せな気持ちよりも、3時間の移動という負担の方が徐々に勝り始めてきたのだ。
アジトから小田原辺りまでは国道135号線の一本道で脇道はほとんどないため、帰路に着く日曜日の夜は、週末を楽しんだ行楽客によりほぼ全区間渋滞に見舞われる。
どこまでも続くブレーキランプを眺めながらの帰り道はアジト熱が冷める大きな要因になってしまった。
なんとかしなければ…
アジトを引き払うにしても、相変わらずの荷物。いや、以前にも増して荷物は増えている。
東京でトランクルームを借りるしかないのか。
新たに気づいたものも含めて課題を整理しよう。
①移動時間が長い。
②観光地は道路が渋滞する。
③リゾートマンションが多いため物価が高い。
④家に着くまでお酒が飲めない。
もちろん、いまさらトランクルームはお断り。
伊豆半島にあるアジトでそんな事を考えていたまさにその時、ふと振り返えれば、似たような半島があることに気づいたのだ。
そう、伊豆半島から房総半島が見えたのである。
房総半島で課題は解決出来るだろか。
①について、アクアラインを使えば外房まで2時間圏内である。
それよりも①も②も、そもそも車移動を止めればいいのだ。
房総半島にはメジャーな観光地やリゾートマンションもないので、物価は安い。③もクリアだ。
④について、アジトから帰る日は運転があるのでお酒が飲めなかった。①と②同様、そもそもの車移動を止めればいいのだ。
そんな訳で、伊豆半島の「アジト」を引き払い、①から④の全てが解決する房総半島の「ニューアジト」を持つことになった。今度は、とことん田舎で不便なところにしようと思い、山の中の一軒家、最寄りのコンビニまで3キロ、徒歩40分、大原海岸までは10キロの場所である。
ニューアジトは、房総半島の南東部に位置するいすみ市にあり電車と車を使う。
京葉線で東京から上総一ノ宮まで特急わかしおで1時間、上総一ノ宮駅前に月額4,000円の駐車場を借り、ニューアジトまで20分。大半は電車なので移動の疲れはない。
帰りは上総一ノ宮で車を置けば、お酒を飲みながら東京まで帰れるのだ。
格安で手に入る野菜や魚は生産者の直売所がたくさんあり、港の朝市が開かれる大原漁港はイセエビが有名で、漁獲量は日本一を誇ります。
ニューアジトは山の中にあるため、美味しい空気と満天の空に星の輝きを見ることが出来る。
そしてなんと、6月にはホタルが舞うのだ。
家でお酒を飲みながらホタルの舞を独り占めし最高の贅沢を味わえるのである。
嗚呼、なんて素晴らしき哉、我が人生!
庭にキョンが出没するが、それもまたご愛嬌。
*大原漁港:9月には大原海岸での勇壮な大原はだか祭り、毎週日曜日に開催される「港の朝市」が人気。
*キョン:小型のシカ科の仲間、特定外来生物。1970年代、週刊少年チャンピオンの漫画「がきデカ」の主人公こまわり君が放つ一発ギャグ「八丈島のきょん」は流行語となった。
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