映画館でトゥーランドット「β」ヨンフンのNessun dorma と針の穴
英国ロイヤルオペラ・ハウス ・シネマ シーズン2022/2023
トゥーランドットをみた話。
オペラトゥーランドットでというよりは「オペラ」で、一番有名な曲かもしれない。
「Nessun dorma」有名すぎるこの曲。
日本に訳すと「誰も寝てはならぬ」
このオペラを見て、この曲を楽しみにしていない人などいるんだろうか。
3幕に男性が歌うこの曲。
手前の、2幕終盤にこのメロディーだけを、オケの何かの楽器が静かに美しく歌う箇所がある。
このメロディーがふわりと聞こえてきただけでもう、それはもう楽しみで楽しみで。
結局今回は、気持ちが高ぶりすぎ、期待値が上がりすぎた為、3幕で冷静に聴く事が出来ず、消化不良で終わった。
あくまで素人、一井の市民の感想にすぎないのだけれど、正直に言うと少し違和感があった。
ROHのカラフ抜擢くらいなのだから、技術も表現力も一定のはずである。もちろんそうだったが。
この役は、韓国出身のヨンフン・リーが演じる。
ここまでくると、後は好みの問題なのかもしれない。見た時の精神状態ももちろん影響する。
わたくしには、端正すぎた。
もっと沢山の造詣があれば深く芸術を理解できたならまた解釈は異なるのかもしれない。
彼の歌い方が好きな人も沢山いるのだろう。
ビジュアルはカラフそのものだった。
カーテンコールで心なしか彼への拍手
が期待より少なく感じた。
最初の違和感を引きずったまま聴いた。
だから、拍手が少なく聞こえたのかもしれないが、もしかすると、私と同じ事を感じた人がいるのかもしれない。
マイクや音響の具合でも全く聞こえ方が異なるのも知っている。
リューへの観客からの拍手の熱量は他の役者以上だった。
いつかヨンフン・リーの生の声を聞いて判断したい。
芸術家は、情熱と冷静さを保ち、氷と炎の両方を持ち合わせていないといけない。姫のように誰かに言われたから、結果として愛の一言で片付けるという、そのやり方を否定はしない。
だが。
ほんの数ミリだけど、針に糸を通せていない。バットの芯に当たってない。何かに妥協し、彼は愛に頼っているように見えた。
いや、神に愛されているから故、本当の芸術家にしか見えない別の穴に糸を通していたのかもしれない。
素晴らしい歌手に違いない。
彼の今後の活躍を見守っていきたい。