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サタ☆シネ「ザ・イースト」


公開 2013年
監督 ザル・バトマングリ
公開当時 ブリット・マーリング(31歳) エレン・ペイジ(26歳) アレクサンダー・スカルスガルド(37歳)


「環境テロ」を題材にした作品で、淡々とした作風ながら最後まで緊張感が途切れない骨太の社会派サスペンスです。
主演のブリット・マーリングの知名度は低いものの、エレン・ペイジ、アレクサンダー・スカルスガルドなどの個性派俳優が多数出演しており、個々の人物像もしっかりと描かれています。
随所に目をそむけたくなるような痛覚描写があり、「肉を切らせて骨を断つ」ようなジェーンの捨て身の潜入捜査と、テロリストたちの剝き出しの純粋さが心に刺さる作品です。

環境破壊をする企業に対し過激なテロ行為を行う組織「ザ・イースト」。
組織に潜入し諜報活動をするジェーンは徐々に彼らの理念に感化されていく…


副作用を隠し薬で莫大な利益を上げた製薬会社や、人体に有害な汚染物質を川に放出する企業に制裁を加える環境テロ組織「ザ・イースト」に潜入するジェーン。

彼らは文明の恩恵を切り捨て、電子機器やメディアの情報から自らを隔絶し、互いに助け合う独自のコミュニティを形成していた。
食事は捨てられた残飯を漁り、川で体を洗うなど徹底したエコロジーを貫きつつ、運命共同体のように男女の垣根を超え一つの家族のように互いを支え合う。
ジェーンは彼らのカルト宗教を彷彿とさせる奇妙な儀式や食事方法などに違和感を抱きつつ、捜査のため彼らと行動を共にする。

彼らの報復の方法は「目には目を、歯には歯を」。
企業の幹部に被害にあった一般庶民と同じ苦痛を味合わせるというもの。

テロを防ごうと必死に行動するジェーンだったが、次第に彼らに感化されていく。

民間警備会社のボスは顧客を増やすことのみに注力し、テロを黙認する。
ザ・イーストのメンバーと過ごすにつれ、彼らが追及する正義と、社会の現実との間で葛藤するジェーン。
資本主義の利益中心の構造に信念が揺らぐ。

ジェーンが諜報員だという事は最初からバレており、組織のメンバーは彼女を利用し情報を得ようとしていた。
ジェーンはテロ組織を出たり戻ったりと自由に行動しており、優秀な人員ぞろいの「ザ・イースト」のメンバーに自らの素性が掴まれていないと信じるのもあまりに詰めが甘いと言えますが、ジェーンが組織のメンバーと家族のように過ごすうちに変化していく過程を丁寧に描いており違和感は感じません。

「ザ・イースト」のメンバーは富裕層の子女で構成されており、衣食足りて理想ばかりが高くなる甘ちゃん連中と捉えられても仕方無いかもしれません。

彼らの行動は直情的で極端ではあるものの、何とかして環境問題に対する社会の無関心さに一石を投じたいという執念が伝わってきます。

登場人物はみな個性的でキャラが立っていますが、中でも出色なのはやはりイジーを演じたエレン・ペイジです。
こじらせ女子を演じさせたら彼女の右に出る女優はいませんね。
富裕層の出身でいくらでも未来は選択できたのに、「責任を負う覚悟はできてる」とあえて捨て身でテロ組織のメンバーに加わる…
イジーの不器用さ、純粋さが痛いほど伝わってきます。

主演のブリット・マーリングは制作と脚本にも関わっており、31歳にしてこれだけの仕事をするとはまさに天が二分を与えた才女といえますね。
無駄のないスリリングな展開で、地味ながら見た者の心に棘のように刺さりいつまでも残るサスペンスの秀作です。

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