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7 2011.3.11東日本大震災。解散、引退
私のnoteでは、かつての芸人時代の体験を物語として綴っています。本日のテーマは「引退」です。最後までお付き合いいただければ幸いです。
2010年
相方の近江君から解散したいと打ち明けられた。あまりに突然だった。
いつ、どこでどんな風に切り出されたのかなど細かなシチュエーションをほとんど覚えていない。
そのくらいショッキングな出来事だった。
ただ覚えているのは、普段温厚な相方とは違ってその日は怒気を放っていたことだ。
解散の予兆は自分目線からは一切感じられなかった。既に次の相方は決まっているとのことで随分前から動いていたことだけはわかった。
僕は激しく動揺した。
泣きわめいた。頼むから考え直して欲しいと訴えた。家に帰ってからも涙は止まらず過呼吸になった。死んだほうがましだと思った。例えるならどんな失恋でも比較にならないくらいこの解散宣告はつらかった。将来が何も見えなくなった。
後日同期に仲介に入ってもらい話し合いをした。考え直してほしいと伝えた。しかし考えは変わりそうになかった。途中で無理だなと思ってしまった。
前のコンビ解散の時とは全く違い、僕はひどく取り乱した。
引退するしかないと思った。結局、相方の近江君は何故解散してコンビを組み替えるのか分からなかった。伝えていたのかもしれないが、未だに未解決だと思っている。
解散後、引退の踏ん切りはつかなかった。だってネタが書けない訳ではないし、漫才が出来ないわけではなかった。少しずつ結果も出始めていた。
納得がいかなかった。
だから、最後の悪あがきで相方を探そうと思った。漫才しか書いてこなかったけどコントも真剣に書いてみた。悪くなかった。トリオとコンビも両方試してみた。どちらとも良かった。
ただ、ピンだけは全くダメだった。
でも、何とか相方を探すべく活動は続けていたが前のコンビの再現をしようとしているようだった。もう続けるのは無理かなと薄々感じはじめていた。何よりまた1からやるのは正直無理かなと。
それからは、アルバイトばかりしていた。借金だらけのバイトばかりの酒に溺れる生活になった。
その日もベロベロに酔っていた。
飲み慣れないウィスキーで目が回っていた。部屋がグラングランと揺れているようだった。時刻はお昼の2時半を過ぎていた。今夜も夜勤バイトがあるからそろそろ寝ないといけないなと思っていた。
頭が揺れて目が回る。
気持ちが悪い。
それは酔っていたからではなかったと気付いたのはあまりに長く突き上げるような激しい揺れだったからだ。
嘘みたいな話だが酔いと地震の違いが分からなかった。
2011年3月11日
14時46分。
東日本大震災。
テレビをつけてかなり強い地震だということがわかった。
ベロベロに酔っている中考えていたのは
「これは、電車が止まるだろう。バイトは行かないでよさそうじゃないか?」
そんなことを思っていた。
実際帰宅難民という言葉があったように、電車は使えずバイトは行けなかった。ラッキー!くらいに思っていた。しかし、ウトウトしながらテレビでニュースを見ているうちに状況が分かってきてゾッとしたのだ。
東北地方が信じられないくらいのダメージを受けていた。僕は宮城県の南三陸町の生まれなのだ。
その後ニュースで宮城県南三陸町が津波により壊滅状態であり、孤立していると知った。祖母や従兄弟とも連絡がとれなかった。
自分に関係がないと思っていた時は他人事として見ていたのにいざ自分に関係があると分かるとこんなにもアタフタするのだと思った。自分勝手である。
後に知ることになるのだが、祖母の家や僕が産まれた病院、昔遊んだ公園それら全てが津波により流され破壊されてしまった。祖母や従兄弟は何とか無事助かったが、亡くなってしまった親戚もいた。
未曾有の大災害を前に僕が考えていたのは芸人を続けるか引退するかであった。芸人として自分にしか出来ないことはあるのだろうか。続けるべきなんだろうか。辞めるなら今じゃないか。
僕は引退する事にした。
そして、地元の栃木に帰り被災した祖母を助けようと思った。
映像化への想い
いつかこのnoteを書籍化、映像化したいと、本気で願っています。
僕は芸人を辞めてからの10年間、言葉にし難いほど苦しい日々を過ごしました。
その闇の中でどうにか息をし続け、そして少しずつ光を見つけて解放されていった体験。
それを、自分と同じように苦しんでいる人たちに届けたいと思っています。
誰かが寄り添ってくれることで、人は必ず救われる。
そんな確信があります。
時には冗談めかして、「吉本さん、お願いします!」なんて言ってます。
けれど、心の中では真剣なんです。
僕のnoteがもっと多くの人に届き、広がることで、苦しむ誰かの心が少しでも軽くなる手助けになれば。
そんな期待と願いを込めて、これからも書き続けていきます。
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