感心依存症という疾病が世間に蔓延している。この感心依存症という疾病は空気感染も接触感染もしない。しかしかなりの感染力を有している。視覚、聴覚を介して蔓延するこの疾病は比較的高齢者の、性別に分類すると男性の感染者が多い。更に分類すると年金暮らしの、図書館利用者に多い。簡単にいうと暇を持て余している貧乏人の高齢者に多い。貧乏人と言っても彼らはなんとか食べることは出来るが、余分なものには一切金を使う余裕がなく、毎日を無料で利用できる図書館の往復と、国営放送を視聴するのに時間を費やし
ハムニオの病の知らせがホムタ王の元へ届けられたのは、翌日の事であった。身体がだるいと聞いていたのは僅か1日前の事であった。歳のせいで冬の寒気がこたえたのだろうと、ホムタ王は軽く考えていた。 ハムニオの元を訪れたホムタ王は、少し離れたところに留め置かれた。ハムニオの命令で、ホムタ王への病の感染を恐れた為の処置であった。 側女に話を聞くと、最早、意識は混沌としており、身体が火のように熱いと言っていた。何よりも身体中に赤い発疹が出ているそうだ。 ホムタ王は嫌な予感がしたが、それが当
樹々の緑も落ちて冬も深まったある朝、いつもの様に自身の墳墓の造営を見に行っていたホムタ王とハムニオの元に、急使が届いた。遠くに見える河口近くに、異国からの帆船の様なものを見つけたという知らせであった。 ホムタ王は目が良く、遠目が効いた。確かに、急使が指差す河口近くには、倭のクニの様式とは違う、一見として異国船と解る船が見てとれた。ホムタ王の周りの重臣達に、一瞬にして緊張が走った。異国からの侵攻ではと思ったのだ。しかし、異国船はのんびりと船着場に近づき、やがて、見覚えのある男が
悲鳴とも、絶叫ともつかぬ、獣の様な声が教室の中から湧きあがった。 教室のみんなの眼が一斉に声の出所を探した。 「なんじゃあこりゃあ」 SNSのライブに出てきそうな勝ち気な眼をした女の子が、うる顔で自分の机の上にあるノートパソコンの画面を呆気に取られて眺めていた。 ノートパソコンの画面表示は真っ赤に点滅しており、持ち主の努力の成果は上から順に得体の知れない文字に置き換わってゆく。それはアルファベットではなく、もちろん日本語の漢字でもなく、ひらがなでもなく、カタカナでもない。アラ
題名 言霊の行方 あらすじ 女子高生香が、授業中に発生した自分のパソコンの、ウィルスによる文字化けを理由にして、まんまと英語の小テストを抜け出してしまう。その夜、香は夢を見る。夢の中で香は古代日本、倭国のホムタ王になっている。香は自分が夢を見ている事を自覚していて、どうせなら覚める前にこの夢を楽しもうと決心する。ホムタ王になった香は、国王として倭国を豊かにする為、倭国には未だ存在しない文字というものを、海の向こうの国百済から手に入れようとする。ホムタ王の要請で倭国へ