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ねむみ 4
まぶたが一層重くなったように感じられた。一体どうしたらいいんだ、このねむみは。僕はゆっくりと顔を天井のほうに向けてみた。教室の蛍光灯がまぶしい。お。ひらめいた。このまぶしさで、ねむみと闘ってみてはどうだろう。僕はじっと天井の蛍光灯を見つめた。なるべく新しそうな蛍光灯を選んで見るように努め、電気屋に行ったときに家庭用の照明が陳列されているゾーンで白い光に目がくらむ、あの効果を狙った。なるほど、目がいい感じに刺激されて、少しシャキッとしてきた。ぼくは、さらに徹底的にねむみを追い払おうと、続いて窓の外を眺めた。夏の太陽はぎらぎらと眩しい。しかし太陽を直接見ては目がつぶれてしまうので、背筋を伸ばし、顔を太陽の方向に向けたままゆっくりと目を閉じる。蝉が元気よく鳴いている。時折カーテンを揺らす南風が涼しくて気持ちがいい。ああ…今日はなんていい日なんだろう。外の空気を感じれば、こんなにもすっきりとした気持ちになるのか…。なんだか頭がさえてきたーー。
「ちょっとそこ!」
いきなり京子先生が怒鳴った。なんだなんだ。何事だ。さっきまでお経を読むかのように静かに淡々と授業をしていた京子先生が、こんなにも迫力のある声を出すなんて。きっと誰かがよっぽど悪いことをしたに違いない。僕はそうっと目を開けた。すると、なぜだか京子先生とばっちり目があった。え…?
「居眠りしないように。」
僕かよーー!!僕はねむみと闘うために、この素晴らしい夏の光と空気を感じてリフレッシュしていただけなのにー!誤解だ!!京子先生!!僕への忠告が終わると、再び彼女は黒板に向き直り、お経のような授業を再開した。女子たちが、僕のほうをちらっと見てクスクス笑った。くそう。実際に居眠りをしている奴らは、そのやりかたがうまいのだ。左手で頬杖をつき長い前髪で目元を隠して寝たり、教科書を開いて机の上に立てその陰に隠れて伏せて寝たり、みなうまく先生の目を盗んで気持ちよく寝ている。僕にはそんな器用な真似はできない。妙に真面目な性格ゆえに居眠りをしないよう奮闘した結果、ずる賢く居眠りをしている奴らは怒られないで、頑張っているはずの僕が怒られるのだ。そして女子たちからは、ダサーいなんて思われる。ついてないなあ、僕って。
(続)