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ねむみ 1

 近頃女子たちの間で、「~み」という言葉が流行っているらしい。SNSなんかでよく見かける。「テスト範囲広すぎ。つらみ(;_;)」とか、「今日めっちゃねむみ。」なんて投稿する女子が増えたように思う。最初は何のことだか意味が分からなかったが、どうやら「つらみ」は「つらい」、「ねむみ」は「ねむい」のことらしいのだ。「痛み」とか「かゆみ」といった、形容詞を名詞化する「み」の類らしい。なんでこんな言葉遣いをするのだろうか。女子たちは、こんな言葉遣いをする自分たちを可愛いと思っているのだろうか。スマホをいじりながら、いつも疑問に思う。

 そして、今まさに僕はその「ねむみ」と闘っている。高校に入学して初めての夏休みを控えた七月の上旬、今日の一限目の授業は、京子先生の世界史だ。始業のチャイムが鳴ってまだ十分もたっていないのに、僕はすでに強烈なねむみに襲われていた。昨日夜更かしをしていたわけでもなく、今朝早起きをしたわけでもなく、原因は単に京子先生の授業が面白くないからである。

 先に言っておくが、僕は勉強ができるタイプではない。いや、中学まではそこそこデキル奴だったが、現在通っている進学高校に入学すると同時に、僕は「デキル奴」からの卒業をも果たした。周りが皆頭が良くて、僕は今、全体から見ると中の下ぐらいだ。その上運動もできるタイプではない。一応テニス部に所属してはいるが、今はもう幽霊部員状態である。

 そんな勉強も運動もまあまあな僕だが、不真面目な不良タイプではもちろんない。授業をさぼって体育館の裏で煙草を吸うとか、そんな大それたことをする勇気は僕にはない。非常に中途半端な人間なのだ、僕は。真面目か不真面目かと聞かれると、真面目のほうなのかもしれない。何事も徹底せず中途半端なくせに、変なところで妙に真面目だと親や友達によく言われる。実際、授業はぼうっとしてあまり聞いていなくても、定期テストの前には徹夜してでも勉強する。でもそもそも授業を聞いていないので、テスト勉強を頑張ったって大して理解できず、しかもテスト範囲を全部網羅できずに終わり、結果中の下ぐらいの成績をとる、というオチである。

(続)

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