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ねむみ 2

 さあそんな中途半端に真面目な僕が、今ねむみに襲われている。こんな時どうするか。徹底的に不真面目な奴なら、机に突っ伏して堂々と寝るだろうし、徹底的に真面目な奴なら、もとより授業中に眠くなることなどないだろう。中途半端に真面目で中途半端に不真面目な僕は、「ねむみと闘う」という道を選んだ。ねむみを追い払うために、僕はあれやこれやと手を尽くさなければならないのである。

 京子先生が淡々と板書をしていくのをぼうっと眺めながら、僕は0.3ミリのシャーペンの芯の先を、左手の甲に押し付けた。痛い。しかしねむみは追い払えない。僕は気合を入れなおしてさらに強く押し付けてみた。すると、ぽきっとはかなくシャーペンの芯が折れた。まじかよ。今度は芯を出さない状態で押し付けてみた。痛い。痛すぎる。僕はあまりの痛みにシャーペンによってねむみから逃れることを諦めた。

 そこで今度は、右手の人差し指と親指の爪で、左手の甲の皮膚を強くつまんでみた。が、不幸なことに、僕は昨日の夜きれいに両手の爪を切ってやすりまでかけてきたことを思い出した。くそ。今日に限って…。母さんに、爪が伸びてきたからはやく切れ、とここ一週間再三小言を言われ、昨日やっと重い腰を上げて切ったのだった。深爪状態になりやすりで滑らかになった爪で皮膚をつまんでも、痛いどころかむしろツボ押し効果のごとく気持ちがいいぐらいだった。体の一部に刺激を与えるというねむみ撃退方法は、痛すぎても痛くなさすぎても効果がない。ねむみは結構手ごわい。
 
(続)

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