
肌の色 目の色 髪の色
まご「あんな、おばあちゃん」
祖母「うん」
まご「うち、初めての海外旅行がシンガポールじゃったんじゃあ」
祖母「看護学校の頃じゃったかなあ。夏休みのバイト代つぎ込んで
行ったがなあ」
まご「うん。友達がパック旅行に誘ってくれてから。
ほんでな、緊張しながら一生懸命友達について歩きょうて、
ふいに顔をあげてフッと後ろを振り向いたんよ。ほんでわかったんよ。
『ああ、これが普通なんか』って」
祖母「?」
まご「ずっと日本におったら、当時は今よりもっと外人おらんかったが。
特に田舎には。どこを見ても黒髪に黒い瞳。肌は黄色じゃろう?
言葉は日本語じゃし。
恥ずかしいけえ思い出したくないんじゃけど、
京都に修学旅行に行ったとき、外人さん見るとサインもらいに
同級生と群がりょうたけえな」
祖母「小学校ん時?」
まご「うん」
祖母 大笑
まご ・・・赤面・・・ 「じゃけえな、シンガポールで振り返った時、
肌の色も髪の毛の色も目の色も身長差も体格も本当にトリドリで
おもちゃ箱みたいにガチャガチャでキラキラしてて、
『ああ、本当の普通って、これのことを言うねんな。
私の日常は特異的なんやな』って思ったんよ」
祖母「ふ~ん。おばあちゃんは見たことがねえけえピンとこんけど、
そんなもんなんじゃろうなあ。
おばあちゃんは未だに外人さんみるとドキッてするで」
まご「うちもするで。英語できんけえ。
でもしゃべってみたくてワクっともするんじゃけど。
相手からしたら迷惑じゃろうな。しゃべられんのが関わってきたら笑。
実際困惑されたこともあるし。
あ、ほんでな、うち思うんじゃけど、今でこそ色んな国の人が色んな国に
行って交わっとるが。
でもそもそもはそれぞれの祖先がそれぞれの大陸にたどり着いて、
そこに適応するように進化して、もしくは適応できた種のみが生き残って、
当然争いもあったろうし、そこで勝ち残った種だったり、
政治が生まれればいくつかの種が共存して今に繋がってきたんじゃと
思うんよ。ということはよ、どの肌色も目の色も一等賞じゃね?
みーんな勝ち残ってきた人たちじゃね?」
祖母「はー・・・おもしれえこと考えたなあ」
まご「うん。でもそうじゃね?
それぞれの土地とそこで勝ち残った人種が
自分たちが良いと思う文化や政治や宗教や・・・
なあ、生み出して暮らしてきただけの話で、そこに優劣なんてあるん?
例えばよ、その大陸の産業が自分らにとっても有効じゃけえ取り入れよう
いうことになったら、教えてもらって取り入れる。それだけのことで、
教えるほうが全部偉くて、教えられるほうが全部劣っている、
ということじゃねかろ?そういう価値基準が受け入れられん。
未だに肌の色が黒いいうだけで撃たれて死んだいうニュースが絶えんが。
そういう考え方の人こそ『人に非ず』じゃと思うけど、私は。
身体機能やリズム感は、肌の黒い人種の人たちの方が遺伝子的に優れている
と思うし、繊細さや几帳面さや我慢強さは日本人の方が優れている
気がするけどな。・・・ま、なんか最近は残念な感じになってきよーる
けど。なんしか、おかしいよ。
人類はみんなそれぞれ地球の上で同じように精一杯進化してきただけで、
みんな一等賞なのに、かってに優劣作ってからに」
祖母「ゆら、怒っとんじゃな」
まご「あ、ごめん。語気が強うなっとったな。
なんか昔から差別の話になると熱くなってくるんよな。
理不尽やなって思うことになると気持ちが入ってくる」
祖母「そういやあ、ばあちゃんもようゆらに説教さりょうたなあ」
まご「あはは、ごめんなー、ばあちゃんが偏見でもって言うてる訳じゃ
ない、昔の呼び方が今は差別用語で禁止されているのを知らんだけじゃって
頭ではわかっとったんじゃけど、小さい私にはそれでも許せんかってな。
つい怒りょうた。お母ちゃんにもたしなめらりょうた」
祖母「そうかな笑。まあ、ゆらは小さい頃からそういうことにも敏感やった
しなー。それでええと思うよ」
まご「うん。日本国内だって部落問題とかあるが。あれだって
ただその地域に住んでいたとかそこで生まれただけのことで、
何の意味もないやん。
政策として士農工商の農民の不満を政府に向けないために更に下の階級を
作っただけの話やん。
そんで長い歴史の中で理不尽な扱いを受け続けるから、
それにやられへんように、その地域に対抗する文化が生まれたという事が
あったんやろ?文化やけ、なかなか難しい問題やけど、
鶏と卵で言えばはっきりしとるわ。理不尽に貶めた方が悪いわ」
祖母「そうじゃな。簡単には解決せんけどなー」
まご「そんなモンスター問題にしてしまったのも、自分ら含め日本人やけ」
祖母「理不尽だらけやなー世の中は」
まご「ほんまよー。やっちもねー」
祖母「やっちもねー」