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#11 メタバース大航海時代を迎える前にメタバースについて考える

2015年にイーロン・マスクが立ち上げたニューラリンク社(CEOはマスク本人)も、そういう機器の会社だ。開発しているのは、厚さ4~6ミクロン(髪の毛の10分の1ほど)のセンサーを頭に埋め込んでいく「ミシンのような」もの。2021年4月には、無線ニューラリンクインプラントでサルがピンポンゲームをしている動画が公開されている。

マシュー・ボール『ザ・メタバース』[2022: p.208]

 わたしたちにとってメタバースとは、どのような意味をもつものなのでしょうか。まだ「メタバース」という語は正確な定義もない状態です。さまざまな使われかたをしているのが現状だと思います。ただ、わたしとしてはメタバースをとりあえず「いずれわたしたちがそのなかに入っていくところ」という意味として考えたいと思います。将来わたしたちはメタバースという大海原へと乗り出していくことになるでしょう。

 メタバースについては、まだ進化の途中にあるものなので、今どのような状況にあるのかを確認していく必要があります。メタバースがどのようなかたちになったときに世の中に広まっていくのか、というのを考えることは、とても楽しいことです。ゴーグルが軽量化されたときなのか、チップを人体に埋め込んだときなのか、人間の頭脳に直接つないだときなのか、それとも髪の毛のように頭皮につなげたときなのか、可能性はいろいろとあると思います。ただ、今は人間がそこに入っていくところとして、メタバースはまだまだ未成熟な段階だと思います。

 そのメタバースという空間において、いったいどのようなことが起きるのか、想像をふくらませていくことは、とても楽しいことです。普通の人間には思いもよらないような技術が確実に進化していて、その進化はいつかわたしたちの生活にまで影響を及ぼしてくるのです。そう考えれば、メタバースについて考えておくことは決して時間の無駄ではないでしょう。オンライン会議を強いられたとき、「使いかたがよくわからない」は通用しませんでした。使うしかなかったからです。同様に、メタバースもはじめは子どもが夢中になっているゲーム内世界程度にしか考えていなかったものが、突如社会のインフラの一部として現れる、というようなかたちで普及することになるのでしょう。

 そして、人類は少しずつメタバースに適応していき、人類の歴史はメタバースのなかでも刻まれるのです。やがて人類はその新天地で新たな力を手に入れることになるのかもしれません。メタバースは、これから発展していく分野であることは間違いないと思います。すでに巨額の資金が投入されている以上、「いろいろ試しましたが無理でした」となることはありえません。メタバースに入ることができるということが、簡単にできるようになったとき、一気に生活スタイルが変わることになるでしょう。そして、そのとき人類はその新しい生きかたを受けいれるしかないのです。

 メタバースはどんどん進化していき、いずれわたしたちの生活圏にまで影響力をもつことになるでしょう。そして、そのときにわたしたちははじめてメタバースと正面から向き合うことになるのです。また、新しい生活スタイルがもたらされるわけですので、そこでまた才能ある者たちが大いに活躍をすることでしょう。ただ、まだそのときは到来していません。理想像として、そういった世界をイメージしている人たちはいるでしょうが、その人たちの夢見る世界が本当に訪れるには数十年という年月がかかると思います。

 わたしたちは全員が全員、才能があるわけではありません。無意識的にこういったテクノロジーを避けてしまうような人たちもいることでしょう。恐らく、今のわたしたちにまず必要な態度は、高度なテクノロジーを使いこなして時代の先頭を歩く、というようなことではなく、今のわたしたちの生活を少しでもよいものとすることができるように活用できないか、という実に地味でありながら、なによりも大事なことを考えていくことではないでしょうか。

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