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北海道が好きになったわけ⑩

共有スペースのカーペットがキレイになりベンチも置かれたので、皆んなでよくそこで円く座ってお喋りしたり飲んだりした。他愛のない話をしてゲラゲラ笑いながら飲むのは本当に楽しかった。

その日は4人で飲んでいた。蓮ちゃんと岩田ちゃん、沢村と僕の4人。他のヤツらは石田ちゃんの部屋でゲームでもしてるのか、アッチはアッチで盛り上がってる。

僕ら4人も楽しく飲んでいて、たぶんそこそこ酔ってはいたんだと思う。

視界の端の方で何か動いた気がした。「ん?なんだ?」と顔を右側に向けるのと同時くらいに、何かが右から左にサーっと走り抜けて行った。とても早かったのでハッキリと見えたわけではなかったけど、高さは5センチくらい、100円ライターくらいのサイズのシルエットで二本足で腕を振って走っているように見えた。なんというか、人のように見えたのだ。ソレは蓮ちゃんの4畳半部屋から出て石田ちゃんの部屋に消えて行った。

え?なに今の?飲み過ぎたのかな?
ハッキリ言葉にすると

「小さな人が走っていた」。

いやいやいやいや。んなわけない。
え?でも、あんなライターくらいの高さと幅の生き物って何かいるだろうか。ネズミとかリスはもっと大きい。スピードはゴキブリくらい早かった。少なくとも僕はそんな生き物は知らない。

気がつくと4人とも黙ってしまっていた。
なんとなく盛り下がったのでそれぞれ自分の部屋に戻って寝た。

翌朝、起きて歯を磨いていると蓮ちゃんが起きてきた。
「おはよー」「ういっす」

「シャケちゃん」「ん?なに?」
「昨日さぁ」「うん」
「やっぱいいや」「え、なによ。気になる」
「いや、変な事聞いていい?」「なに?」
「昨日さぁ、変なもの見なかった?」「え!」
「コレくらいの何かすばしっこいのが石田ちゃんの部屋に入って行った」「え!蓮ちゃんも見たの!?」

2人で驚いていると岩田ちゃんと沢村も起きてきたので、2人にも聞いてみた。

「なあ、昨日の夜変なもん見なかった?」
「それって人差し指くらいの素早い人形のこと?」
「えー!皆んな見てたの?言っても信じてもらえないだろうから黙ってたんだ」

4人で昨日見たものについて話し合った結果、
昨日のはコロボックルに違いない!
という結論に達した。

あんな小さな人型であそこまで素早しっこいなんて他には考えられない。しかもコロボックルはアイヌの神様でもある。更に、僕らのアパートから車で5分くらいの場所に「先住小民族住居跡」なる遺跡がある。

我々は見てしまったのだ。
北海道に住んでいた先住小民族であるコロボックルを!!

そして石田ちゃんの部屋には、赤い帽子の女の人に加え、コロボックルも棲みつくことになった。まぁ、気にならないタイプだからいいか。。。

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