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慢性骨髄性白血病は完全寛解したけれど  #9 治療の中心は線維筋痛症外来へ

 今から2年前の冬に始めて線維筋痛症外来を受診した。その病院は自宅から19kmも離れているが、バスなら乗り換えなしで自宅近くのバス停から病院前のバス停まで行けるし電車でも行きやすかった。また、その地域の大病院で診療科の数や検査態勢も充実していて安心だった。

 初診は1時間くらいかけて丁寧に問診や触診をされた。当時は手の強ばりが特に強く手足や背中に痺れや強い痛みがあったが、体を触ってもどこが痛いかわからなかった。線維筋痛症の診断では体の数カ所を押して痛みが出るかという点を重要視するが、私は押されたことへの痛みの出現が弱かった。

 あらためて体に痺れや痛みをもたらす他の病気がないか検査も行ったが異常はなかった。担当医師からは「一部に線維筋痛症の診断基準と合致しない点はありましたが、実態は線維筋痛症に準じた症状です。」と告げられ、正式な診断名は線維筋痛症疑となった。

 インターネットで線維筋痛症について調べてみると、たしかに私に当てはまることが多い。ざっと挙げただけでも、全身の慢性疼痛のほか、疲労感、手指のこわばり、レイノー現象、過敏性腸症候群、頭痛・頭重感、四肢のしびれ、めまい、睡眠障害(不眠、過眠)、集中力低下などがあった。症状の改善や悪化に波があって一定ではないことも得心した。

 線維筋痛症の原因についてははっきりしていないが、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどの物質が十分に機能していないからだと考えられている。そうなると、抑うつ症状が強く出ればうつ病で、疲労が強く出れば慢性疲労症候群、痛みが強く出れば線維筋痛症なのか?とも思った。

 何にせよ、セロトニンなどの3大神経伝達物質が原因ならば脳の問題である。素人考えでは分子標的薬の服用が脳の神経に悪影響を与えて線維筋痛症の症状が出たと考えてしまう。だとしても恨んではいけない。薬の服用によって命が助かったのだ。感謝して線維筋痛症の治療を頑張ろうと思った。

 その頃は、急性リンパ性白血病を罹患した水泳の池江璃花子さんが退院して復帰に向け頑張っている時期だった。「池江さんは苦しい治療過程を経て前向きに復帰へ努力している。自分も頑張らなくては。」と思った。だが体は思うように動かずソファやベッドで横たわっている時間が増えていった。

 妻は、横たわっている時間の長くなった私を見て「白血病の悪化もあって余命が1、2年なのではないか?」と本気で心配したそうである。しかし、BCR-ABL融合遺伝子検査を行うと白血病細胞は0.0032%以下となっており、極めて低いレベルまで白血病細胞を減らすことができていた。

 となると、線維筋痛症の症状を改善することが社会復帰への近道となる。線維筋痛症外来の医師から「ノイロトロピン」という薬剤の注射が治療に効果があると教わった。そこで1週間に一度は当該の病院に行って注射を打ってもらった。たしかに注射を打つと一時的に症状が軽減されて嬉しかった。

~#10 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に続く~

 

 

 

 


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