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ダムの虜

イセは、寺の生まれだ。
カッコつけでいつも整髪剤を塗りたくっていて、フレグランスを10メートル先まで匂うくらいつけている。
訛りがあり茶化されるのが嫌なため、歯に銀歯を入れている。

イセは言う。
経済学学ぶために入ったんだ。
けどな、めんどくせって一年の夏に思ってさ、そこからだよ行かなくなったの。
授業は代返たのんでさ、試験は過去問といてホンで卒業、だから全部で一週間くらいしか出てねぇ。

サッカー部の同期は呆れ返る。

ハーフタイムで体力が尽き、交代を命ぜられた。喫煙と酒が原因だ。テクニックはチーム一なのに、不摂生を重ね、周りを意気消沈させている。

監督からお前は痩せろと度々言われたが、言葉の真意を推し量らず、生活自体変わることが無かった。

監督から、
イセ、お前さ、もう四年だろ、いい加減節制しろと直接言われ、初めて理解した。

グラウンドのトンボ掛けは一年生の仕事だ。イセは、夏休みに入る前の、といっても彼にとっては既に休みだが、珍しく一緒に進んでトンボ掛けをした。

珍しい光景にもかかわらず、誰も気にとめないでいると、腹が立ったのかグラウンドに唾を吐き、外周が終わると、すぐ帰っていった。

経済学のゼミは、定年前の教授についた。一日中、本を読み、感想を言えば終了という簡素というか安易なゼミで、イセにとって好都合なゼミ。

居酒屋のアルバイトもした。
金には執着する方で、使うことも稼ぐことも人の二三倍デカク、周りをヤキモキさせる。給料の半分をパチンコに費やしたかと思えば、一日中ホールに入り、居酒屋のシフト表の枠にデカク「イセ」丸印をして誰も疑わない位仕事熱心だった。

俺は店長、アイツは仮と言うとドット沸く。
事実とは逆のことなのに。
それぐらい人望があった。

そんなイセも卒業する。
式の後のサッカー部打ち上げのとき。
また一つ武勇伝。
皆の卒業祝いとこれからの部の躍進を重ね、全裸で裸躍りをしたのだ。
女子マネージャーは顔を赤らめ、下を向き、ホールの店員は驚きお酒を落とした。彼は、出禁となった。無論、承知の事だとしんじたいが。

今彼は、ちゃんと就職し、居酒屋の店長として働いている。彼らしく、いつでも戻れるようにと、実家の寺に自分の墓石を建立してから。

画像)Stable Diffusion 1 Demoより作成

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