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飛ばない鳥 アスカ

昔々有るところに一羽の鳥がいた。

名前はアスカ。
飛ぶに鳥と書いてアスカと呼ぶ。

「法の定ル天命の勅命下る飛鳥川」

男子のトルコは、式の後、
川で洗濯をしようと、
防寒対策バッチリに向かった。

「おりゃー、おりゃー。」
行くとそこには大勢の男女がいて、
諍いなのか、叫びあってふざけてた。

「遅いんだ、早くしねぇーか。」
「コッチはそっちより量が多いんだ。気づけ!」

それを見てトルコは、
本当に困った時は、人間その場を逃げ出すはずだから、これは本気半分、遊び半分なのだろうと
タカをくくった。

「自分は自分と」
トルコは洗剤を桶にいれ、水を足し、
ジャバジャバと洗い始めようとした。

一枚目を洗い終えたその時、
迂闊にもトルコは、
農場の検便の蓋を間違えて落としてしまった!

「こ、これは怒られる。」
早く見つけねぇとと、慌てふためくトルコ。

川下に流れていった白く小さな蓋を、
まるで親とはぐれた小鴨のように探す。

中洲まで歩き、
ようやく石に混じった検便の蓋を見つけた。
トルコはじっとそれを見た。

「傷ついてないな。
 あー、良かったな、中洲があって。
 あー、良かった。」

帰って洗濯しないとと気づいたトルコは、
今洗濯の途中だと気づいて、
中洲から川上の方へ向かう。

すると、
突然一羽の鳥が向こうの方から歩いてきた。
何やら探し物をしてるみたいだ。

トルコは腹いせのつもりで、
その鳥に向かって叫んだ。

「おい、邪魔だぞ、どけ。」

するとトルコのその声に気づいたのか、
顔をスッとあげ、じっと見ると、鳥。

「ワタシはアスカという。祖はナニモノぞや。」
 いきなり喋った鳥に、
 トルコは驚き、腰を抜かし、尻餅をついた。

「我は、人間だ。お前は鳥だろ。」

震えて怯えるトルコに、
さらに鳥のアスカは、一言こう告げる。

「もう戻るな、うえで二人が殺し合いをしている。そして、この事は絶対に言うな。」

トルコを尻目に、アスカは川岸をまるでシーザーのように渡り、去っていった。

「こ、こんな、こんな事があるのか。」
「落ち着け、落ち着け。今はとにかく帰るんだ。」

 一人早足に帰宅する道は、いつもより険しく長く感じる。動揺していると武士に悟られたくなく、ひたすらタッカタッカと兵隊の行進みたいに歩いた。

トルコは帰宅し、まず家の前に塩をまき、
ついで地蔵さんの水を変え、着替えた。

絶対に言うなとアスカが言ったのを真に受け
、とにかく寝ようと思い、床についた。

ひたすら「何事も有りませぬように」
と念じて、床についた。

次の日。何やら街では朝から武士と皇族が言い争っている。昨日の出来事のことで揉めているみたいだ。実は、トルコが床についた後、街では川で死んだ二人の犯人探しが行われた。現場には目撃者がおらず、あったのはトルコの洗濯道具と刃物二つだけだった。今、トルコはその被疑者になっている。

「沢で何してたのか?」
「お前どこかで乗り換えたのか?」
「グルがいるんだろ、カメみたいな。」

トルコは寝起きに一杯しようと考えていたが、
思いもよらないもう急展開の話に、
まるでスケバン刑事を見るようで、
腰を抜かした。

「俺は、俺はやっていない。
ヘリョン、シニョン、カメレオン!」

動揺して何を話しているか分からないのは、無理もない。錯乱状態のトルコを見て、取り調べの一同は、トルコを一旦落ち着かせるため、ひとまず帰っていった。

「何を何を誰に誰に」

「整理出来ない!どうしたら良い!」
「アスカが言ったのを守るべきか。」
「それとも正直に話すべきか?」

トルコは自分が二心の人となり、
手にしたのが酒か水かも分からないみたいで。
「そうだ、地蔵に聞いてみよう」考えた。
 想う処、正直に念じた。

すると地蔵さん、
「トルコ、それならアスカに話すれば良い」
と返してくれた。

あっ!と声をあげるトルコは、思い立ったが吉日とばかり、家を飛び出していった。

 衣も乱れて、歩くのイヤになったこの道。トルコは思い返しながら、川に向かった。途中で雨が降ったのか、石がゴロゴロと斜面から落ちていて、それに足を取られそうになって、
この道は何か有ると、周りを疑りながら歩いた。

この道の
卦も当たらぬこの事を
誰も信じぬこの世の情けか

川に着くと、自分の洗濯道具があったが肝心の鳥はいない。死人は回収され、足元そこらじゅうに血が飛び散り石にこびりついている。

「あー、こんな事したのか!
ダメだベェ。」

怪しげな人と思われてるのか、
周りの住宅から幾人の人影が見えた。
「これは急がないと、変な目で見られてる」
とトルコは考えた。

川下に向かい、中洲に着くトルコ。
そこに出た!
あの一羽の鳥、アスカが寝ていた。
しかも、仰向けの大の字で!

「ふっ、また来たのか?
トルコよ、自信をもて。
やっていないと言え。
俺は三千年生きているんだ。
何もかもが見えている。」
トルコにアスカが言う。

トルコは事の成り行きを説明し、
こう続けた。
「ホント貴方のような鳥は初めてだ」

それにアスカは、
「もう帰れ、時間だ。」と言う。

 背中をこちらに向け、寝返りをうち、
 床に伏そうとするアスカを
 いぶかしく思いながらも、
 トルコは仕方なく帰った。

 家に着くとすでに一同が待ち構えてた。
 すると突然、言う。
 「お前は白だ、、無実だ」
 聞けば、向かいの住宅の住人が
 二人だけの殺し合いだったと証言したらしい。

トルコは胸を撫で下ろした。
皆に心配かけた旨述べ、ありがとうと言った。

補足)
事実は小説より奇なり
こんな怪事件はどこそこにもある。

地蔵さんに手を合わせ、未来を見るとき、我々は必ず過去に何があったのか分からなくてはならない。

もう何処か遠くへなんて言うな。
足元の不思議な事にぶつかってほしい。

そうすればそれは前にもあったこと。
これからも起こること。と割りきれる。

後日、スーツにバッジをつけたトルコは、
法案成立のため、東の館に向かったとさ。

終わり

画像 Stable Diffusion 1 Demoより作成


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