104歳のまささん天国へ
あの世にもっていけるもの
神様はみてくれている
彼女がいるから職場に行けた。そんな104歳のマサさんについて記録しておこうと思う。
私は看取りまでをする高齢者住宅(富裕層が多い)に勤務している。出勤、退勤ともに車いすで出待ちしてくれ「今日もご苦労さん」と手を握ってねぎらってくれるお姉さんのような頼りになるおばあちゃんです。
正直言うと先輩であり年齢の離れた友達でもあった。
彼女は早くに夫を亡くし一人でお子さんを育て上げた。寝る時間もなく働き続けたとよく言っていた。清掃の仕事を長年していた。夜道で倒れている人を幾度と助けたとも言っていた。
「ちゃんと見てくれる神様はいるんだよ」これが口癖(*^_^*)
気丈で賢く働き者、最後まで認知が高かったマサさんは毎日ベッドですごすことはなく自分で洋服を選び髪を整え、本人曰く運動と言って長い廊下を車いすで何往復もしていました。おしゃれな女性です。
「後ろから見たら女子高生みたい~」というとめちゃ喜びます!
マサさんのお子さんはすでに亡くなっており身内といえば遠く離れたお孫さんだけでした。お金の管理や葬儀のことは弁護士さんに託してあるので安心とおしゃっています。
マサさんの104歳のお誕生日に贈った似顔絵です。大好きなピンクの洋服を着て笑っています。ヘアは編み込みでマサさんが好きなJK風。とても喜んでくれました。
マサさんは自分の棺の中に入れてほしいものを段ボールに入れていました。この似顔絵も段ボールに入れたからあっちに一緒にもっていくね。弁護士と孫の頼んであるからと・・・段ボールの中にはどんなものを入れていたのだろうか。長い人生の中で大切なものやその思い出にかかわるものなのかな・・・中身は秘密でした(笑)たまに入れ替えもするといっていました(笑)はじかれたものは少し悲しいです(笑)
ある日呼吸が苦しいとマサさんが部屋から出てこなくなりました。様子を聞くと呼吸器を装着しているが車いすで自分のことは自分でこなせているそうで安心。
大好きな三ツ矢サイダー箱買い!今日開けたから24本飲み切らないとね!と笑った。
数日後、マサさんが私のところへ車いすでやってきた。「ありがとうだけ言いたくて」と呼吸器を外してきたらしい。呼吸器をつけてると行動範囲が狭まるので嫌だと・・・さすが気丈なマサさん。
次の朝、救急車で運ばれるマサさん。
介護士さんによると自らこの時間に呼んでくれと依頼したそう。
マサさんなりの出待ち・・・・。
肺が苦しくて運ばれた日も転んで顔が血だらけで15針縫った時も「帰ってきてね」の呼びかけに手を握り目をしっかり見て頷いていた。
そして2時間後には元気に帰ってきた。今回もきっとそうだ!
「帰ってきてね」私の呼びかけに力ない目はうなずかなかった・・・。
次の日マサさんが亡くなったと入院先から連絡がきた。
マサさんが亡くなった後、マサさんの部屋を訪ねる人はおらず・・・。葬儀はマサさんの望むお寺ではなく見ず知らずの町の葬儀場で行われた。あの段ボール箱は誰にも気づかれず遺品整理業者によって捨てられた。
サイダーも・・・
あの世にもっていけるもの
ずっと気になっていたあの段ボール。
ある宮司さんが「モノやお金はあの世には持っていけませんよ。持っていけるのは体験したこと。経験したこと。行動したこと。」と
だとしたら人の何倍も一生懸命清掃の仕事をし、偶然出会った人々を助けたマサさんはたくさんのありがとうをもってあの世へ旅立ったのかな・・・・
マサさん ありがとう
失礼ですがとても清掃会社勤務では入所できないお部屋で晩年を過ごしたマサさん、神様がみていてくれたのですね、きっと奇跡がたくさんある人生だったのでは。
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