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罠に嵌った獲物 ♯11
前話は下記の「♯10」です。
美咲の困惑した表情を見て、俺は内心で笑みを浮かべた。
「すみません...これはどういう意味でしょうか?」
美咲の声には戸惑いが滲んでいる。
俺は冷静を装いながら、用意していた説明を始めた。
「君の清掃は完璧ではなかっただろう。体液が備品に付着していれば、時間とともに変色する可能性もある。だから君が社長室で何をし、何に触れたのか、詳細に把握しておく必要がある。状況次第では専門業者に依頼したり、備品を交換したりしなければならないからな。」
俺の表情は終始変わらず、冷静さを保っていた。
その態度が功を奏したのか、美咲は驚くほどあっさりと受け入れた。
「分かりました。記録します。」
「可能であれば日付も含めてくれ。」
美咲が書きやすいよう、俺は一旦会議室を出た。
彼女の様子を窺いながら、俺は計画の次の段階を考えていた。
美咲は俺の対応に感謝し、尊敬の念を抱いているようだ。
それが彼女をさらに追い詰めることになる。
俺が部屋を出ると、美咲はペンを手に取り、記録を始めた。
「6月30日、社長室の机の角に...ああ、こんなこと書くのは恥ずかしい。」
美咲の呟きが聞こえてきた。
しかし、彼女は懸命にペンを走らせ続けている。
俺は廊下で待機しながら、この状況がどのように展開していくか、そして美咲をどこまで追い詰められるか、興奮を抑えきれずにいた。
罠の最終段階が、今まさに始まろうとしていた。
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