罠に嵌った獲物 ♯33
前話は下記の「♯32」です。
星野エンタープライズの主力事業である電子部品開発。
その品質は国内トップクラスで、
国内外から高い評価を得ている。
今日は、当社の電子部品を使用した最新医療機器の発表会があり、
俺と美咲はその会場に向かった。
「こんな大規模な会場で行うんですね。」
「この医療機器メーカーは絶大な人気があるからな。
発表会の度に国内外から大勢の人が集まるらしい。」
「そうなんですか...佐藤さん。今日はここで何をするんですか?」
「今回の医療機器の電子部品を担当した開発部の村田が海外出張中だから、
代わりに挨拶に行く。
それと少し手伝わなければならないことがあるんだ。」
美咲が了解したと答え、俺たちは会場の裏手へ向かった。
関係者入口から入り、控え室に向かう。
「失礼します。星野エンタープライズの佐藤です。」
「鈴木と申します。」
「お待ちしておりました。こちらへどうぞ。」
医療機器メーカーの社長と開発部長が待っており、
4人で名刺交換を行った。
挨拶が一段落すると、社長が話を切り出した。
「今回も素晴らしい医療機器を開発できました。
御社の電子部品の品質は本当に素晴らしい。
それに協力してもらえて...本当に助かります。
引き受けてくれる人がなかなか見つからず困っていたんです。」
「はい、うちの鈴木がしっかりと対応します。
どうぞよろしくお願いします。」
美咲が手伝いの内容を知らないことに気づき、
俺が何もしないようなので困惑している様子を見て、
内心で笑みを浮かべた。
「精一杯頑張ります。どうぞよろしくお願いいたします。」
美咲が深々と頭を下げる姿を見ながら、俺は不敵な笑みを浮かべた。
彼女が気づかないうちに、
次の罠が仕掛けられていることを楽しみにしていた。
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