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罠に嵌った獲物 ♯9
前話は下記の「♯8」です。
美咲が全てを出し終え、力なく床に崩れ落ちるのを見て、俺は内心で笑みを浮かべた。
「ふぅ...ああ...」
美咲の呟きが聞こえる。
彼女は俺の顔を見ることができず、俯いたまま動けないでいる。
沈黙が続く中、俺は計算された冷静さで口を開いた。
「美咲...この状況について説明してもらえないか?」
美咲は依然として顔を上げようとしない。
彼女の体が震えているのが見て取れる。
しばらくして、俺は演技的に大きな溜め息をついた。
「詳しい話は後にしよう。朝一で会議室に来てくれ。俺はこれで帰るが、後片付けと戸締まりは頼むぞ。」
そう言って、俺は社長室を出た。
しかし、完全には立ち去らず、廊下の陰から美咲の様子を窺っていた。
彼女が洋服を整え、掃除用具を取りに倉庫へ向かう姿を見守る。
廊下を歩く美咲の目に大粒の涙が溢れているのが見えた。
俺は美咲の心の中を想像した。
自分の行動への後悔、恥辱、そして俺への感謝の念。
全てが俺の思惑通りだ。
美咲が正直に全てを話すつもりでいることも予想できた。
しかし、俺の計画はまだ終わっていない。
明日の朝、会議室で美咲を待ち受けているのは、彼女の想像を遥かに超える展開になるだろう。
俺は静かに会社を後にしながら、明日の準備に取り掛かる計画を練った。
罠の最後の仕掛けが、いよいよ完成しようとしていた。
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