愛着を育むコミュニティづくり
イタイのイタイの飛んでいけーって魔法の言葉ですよね。
私は、痛みの改善を専門としているものの、弁慶の泣き所を打ちつけた時などには、今でも思わず「痛いの痛いの飛んでけ~」と心につぶやきながらスネをさすってしまいます。
この痛い部位をさする、圧迫するといった無意識の動作は、実は理にかなっていて、こうした“おまじない”は、痛みの情報が脳へ伝わることを抑えるのです。
子どもがケガをしたとき、
やっぱり「イタイのイタイの飛んでけー」ってやりますよね。
子どものケガが治るわけじゃないんですが、不思議と子どもは痛がらなくなりませんか?
実はこれに愛着形成のヒントが隠されているように思います。
なぜなら、子どもが今すごく痛い気持ちを、自分が痛がっていることを《キャッチしてほしい・受け取ってほしい》主張しているわけです。
その気持ちを親にキャッチしてもらえると、痛みを主張する必要が無くなり痛がらなくなるんです。※外傷が酷いようでしたら急いで外科受診ですけどね。
「愛着形成」は、
精神科医のジョン・ボルビィが1969年に著書「愛着行動」の中で書かれた考え方です。
文字通り、「子どもが不安な時に親や身近にいる信頼できる人にくっつき安心しようとする行動」のことです。
赤ちゃんや小さな子どもは、抱っこしてあげると安心しますよね。
私たち大人も怖い時や不安な時は誰かにくっつくと安心しませんか?
これこそが、「愛着形成」なんです!
そして、その行動を繰り返すことで特定の人(保護者・保育士など)が「安全地域」となっていきます。
その人がいれば、自分は安心だと感じて心も安定し、のびのび成長することができます。
愛着形成ができてないと、どうなるの?
「愛着形成」ができていないと、人との関わり方でとても生きづらくなってしまいます。
例えば、
・適切な反応ができない。
・過敏に警戒する。人との関わりを嫌がる。
・相手が望む“いい子”になるように頑張りすぎる。
・他者との距離感が理解できず、近すぎてしまう。
・逆に知らない人でも、警戒心なくどんどん話してしまう。
特徴が発達障害の特性に似ている所もあるので決めつけることはできませんが、1つの指針になります。
愛着障害が増えてきた
私は45歳ですが、今でも覚えてるんですけど、
我が家は家族8人、祖父母、父母、4人兄妹で、
カラーテレビ一台で暮らしていました。
私が小学校2年生のときファミコンが登場するまで、
一台のテレビを家族で観てたので、
当然チャンネルの主導権は大人たち…
野球観戦か時代劇かニュースでした。
テレビを観ても楽しくなかったし、
刺激するものが家に少なかったので、
子どもらで、お絵描きしたり、かくれんぼしたり、秘密基地つくったりして自分たちで楽しいことを考えて遊んでました。
そう、ちっちゃい頃に家に刺激のあるものが少なかったです。
結果、親や兄妹との関わりが一番子どもにとってインパクトが強かったんです。
愛着形成しやすかったんですね。あの頃の世代は。
ところが今の赤ちゃんたちを取り巻く現状はどうでしょう。
お家にテレビどころかゲームや、いろんな魅力的なおもちゃ、強い刺激を発するものがいっぱいありますよね。
その刺激より強いインパクトを持って親が関わらなかったら、他者との関わりが苦手となりそれだけで愛着の問題を抱えてしまう。
これが今ちょっと愛着障害がいっぱい起こってきている理由の一つです。
例えば、
子育て中の親向けアプリ。。。
赤ちゃんが泣き出したら見せるビデオアプリありますよね。
これ見せたらすぐ泣き止むので私も使っていました。
でもその赤ちゃんが愛着を受け取ろうと一生懸命に泣いて親に伝えようとしているのであれば、その全力の気持ちをアプリなんかで止めちゃったら大変なことになります。
泣いても想いを伝えても、「どうせ相手に伝わらない、気持ちに気付いてくれない」と諦めてしまいます。
知らず知らずのうちに親御さんがよかれと思ってやってることは愛着形成を阻害していた。
そんなお子さんがこれからどんどん増えていくと危機感を感じています。
「愛着形成」は3歳までとは思わない
愛着は3歳までの過程で完成と言われていますが、
それを超えたからと言って取得できないわけではありません。
3歳までに取得した愛着は6~7割ほどが人生で変わらないとなっていますが、それ以降の年齢で人との信頼を築き上げていくことで、愛着を獲得することもできると思います。
愛着を獲得できるコミュニティ
愛着形成=親子関係と思う方が多いと思いますが、
その他の養育者でも愛着形成を促すことができると言われています。
大切なのは、“特定の大人”と愛着形成をする事です。
では、親以外の大人でも出来ることとは何でしょうか?
大切なことはただ1つ
それは、「感情に寄り添う」ことです。
「愛着形成」の基本は子どもの欲求を満たすことから始まります。
ゴールは、「この人は、ワタシ、ボクを分かってくれる。」
と安心するということです。
では、日常の中でどう対応すればいいのでしょうか?
それは、日々の社会生活の中で子どもと共に“問う”時間を作ることです。
何気ない子どもの不思議や疑問をともに「なんでやろねえー、○○かなあー」と子どもと一緒に考える時間。
その時間には、個人差があります。
数分で満足する子や、20分かかる子など様々です。
関わりの中で、その子にはどれぐらい必要なのか見極め接していきたいですよね。
その積み重ねが愛着につながっていき、子どもの不安が安心に変わりイキイキと成長していける地域社会になるのではないでしょうか。