家族のこと 1
私は跡継ぎとして待望されて産まれてきた。ただその頃は胎児エコーとかも発達してなくて産まれるまで男か女か分からなかったようで、産まれた時に女と分かり「女の子かぁ」と姑や大姑から言われたらしい。
それでも私は跡継ぎの一人娘として愛されて大切に育てられた。いわゆる箱入り娘とでもいう感じで事あるごとに「この家のものは全部あんたのもんやで。でも嫁に行ったら全部もらわれへんからな」と曽祖母に幼い頃から言われていた。
その家は元々地方の田舎の商人の旧家で、本宅は今もその地方の記念館としてそのままの姿を残している。家に大きな蔵があり、そこに泥棒が住み着いていたりしても気づかなかったそうだ。
私の曽祖母の2人の兄が家に相撲取りを呼んだりして散財しまくるようになってからみるみる家が傾き始め、唯一曽祖母に引き継がれた財産のみを残すだけになり、少し町の方に移住してきたらしい。兄2人は勘当され、今も墓には入れてもらえず、他のところに葬られている。
曽祖母に引き継がれた財産でもかなり山や田畑も多くあったが、農地解放で一気にそれも減ったらしい。それでも何不自由なく暮らしていけるだけの財産はあったので、分家として町で小さい商売をしながら暮らしていたようだ。
思慮深く賢い人だった曽祖母には兄妹の子供がいた。ただ子供の育て方が得意ではなかったのか「だんさん、だんさん」と呼ばれ、気よしだが働くことを頑張らない兄の方は嫁をもらって家を継ぎ、家事が全くできない妹は戦時中で男も少ない中で、後妻として武家の末裔に嫁いだ。
ただ肝心の家を継いだ兄夫婦には子供が授からなかった。家を守るためにどうしても跡継ぎが必要だったので、嫁いだ妹の長男を子供養子として招き入れた。
それが私の父である。
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