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今さらドンキーコング64を遊んだ話
【起】なぜ今さらドンキー64なのか
複数の要因があるが殆どの詳細は省くとして、今から遡ること3ヶ月前の私は心身ともに疲弊のピークただった。
平日はくたびれて夜遅くに帰宅し、擦り切れて殆ど何もできず就寝。
僅かな休日は趣味であるTCG(※遊戯王、デュエマ、ポケカなどの事)のためにカードショップに向かうのだが、見知った友人はろくに会えず遭遇できたとしてもやっているゲームが違うため遊べない事はしばしば。
仕方なく同じゲームをやっている見知らぬ人間に声を掛けて遊んでみるが、どうもしっくり来ず仲良くなれない。
そもそも、商品を購入して必要なパーツを揃えて遊ぶ対戦ゲームの常として金を積んだとて必ず勝てるとは限らないのだ。
(今のままでは平日も休日も、不満の発散は叶わず溜め込み続ける一方なのではないか?)
(己がいくらやれる努力をしても、より大きな力に屈するのでは私は何も成せないと否定するしかないのではないか?)
自己肯定感と達成感を得られない、永遠に続くように思える不毛な日々を、本能は危機と思ったのだろう。
ある日、脳内に囁きが聞こえた
「もう良い。お前はよくやった。休め。」
決断の後は迅速が尊ばれる。
最低限を棚にしまい込み、今まで遊んできたカードを全て売り払った。休日に無理にカードショップに行くのも止める事にした。
多分、思い出すのも嫌だから見たくなくなったのだと思う。
その代わりに、今まで後回しにしてしまっていた他の趣味を楽しむ事にした。
今まで蔑ろにしてきた日々は取り返せないかもしれないが、これからはきっとより良い日々が作れるかもしれない。
そう思うと少し心が軽くなった気がした。
「紙をしばければきっと幸せになれて、満足して休日を終える事ができるから」という今思えば達成できた覚えのない望みのために「いつかやるから」と片隅に追いやっていた色んなもの。
それは最近駿河屋で買って以来、放置され部屋の片隅にあった。
彼はそこで機を窺い、待ち構えていたのだ。
『ドンキーコング64』。
レア社が開発し、1999年に任天堂から発売されたニンテンドー64専用ソフト。
主人公であるドンキーコングとその仲間である、
ディディーコング、ランキーコング、タイニーコング、チャンキーコング。
以上、5匹のコングを操作し宿敵であるワニのキングクルールとクレムリン軍団を倒す3Dアクションゲームだ。
今作における戦いは、善玉であるコングファミリーの住むDKアイランドを丸ごと消滅させるキングクルールの最終兵器ブラストマティックに起因する。
ゲーム開始時、不慮の事故によりブラストマティックは故障。クレムリン軍団はドンキー以外のコング4匹を捕まえ、更に彼らコング達の秘宝であるゴールデンバナナ201本を奪い去ってしまう。
ドンキーの使命とは、仲間を助け出し、ゴールデンバナナを残らず回収し、ブラストマティックを完全破壊する事にあるのだ。
筋書きはありきたりだが役者が良い、という好例ではなかろうか。物事はこれぐらいスマートでもたまには良いだろう。面白い。
さて、今作は1999年発売ということもあり3Dアクションゲームとしては偉大なる先達が存在する。
そう、スーパーマリオ64だ。
3Dアクション黎明期のゲームとしてはあまりに高いアクションの自由度と拡張性。
単純明快なゴールを提示しつつ、通常クリアの範囲内ならば手軽に攻略できる簡単さと完全クリアを目指すならば程良く手強い難しさを併せ持つ任天堂らしいゲーム性。
これが1996年(2022年時点で何と26年前!)の時点で完成していたと言うのだから驚嘆に値する。
では、その後継であるドンキーコング64とはどうなのか。
結論から言うと、極めて段違いな高難易度のゲームだった。
事前の情報は長年ゲーマーをやっていれば少しは入ってくる。
伝え聞く難易度はとても良ゲーとは呼べない域であり、ゲーム内のゲームで詰んだという怪情報すら飛んでくる。
小学生の頃、近所の友人もこれを遊んでいたのだがどうも完全クリアまで辿り着いていた記憶がない。恐らく小学生の彼は途中で詰んでいた。
同じ世代であればクリアまで行き着いた人間も多いマリオ64や時オカと違い、私は未だドンキー64の全貌を暴けずにいたのだ。
「面白い」
ふとそんな言葉が口をついた気がした。
20年以上経っても未だに全てを知らないゲーム。
今まで出会った中で恐らく一番の難易度を誇るゲーム。
これを乗り越えれば、失われた自己肯定感と達成感を再び得られるのではないか?
消えて久しい心の昂りが湧き上がった瞬間。
私はカセットとメモリー拡張パックを本体に差し込み、起動させた。
それがどれほど困難な道程となるかも知らずに…。
【承】に続く