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感想 「コーチカーター」 コーチング学習素材として
僕にとっての本作:
カーターコーチは、バスケットボールを通じて、生徒に大事なものを伝える。カーターコーチは、生徒に「セルフトーク」を生み出し続ける。
僕は今、コーチングを勉強している歴史教師です。コーチングは、2024年春からあるプログラムを受講しています。
コーチング学習という観点から、これまでにみたことのある映画で印象的なものや、教材として使ってきた映画などを振り返ってみたいと思いました。
この試み、記念すべき第1回目は、「コーチカーター」。いや、もうコーチってタイトルの映画ですからね、避けては通れぬ。
2005年の映画。
1999年前後の、実際の出来事。
カーターコーチは、実在する方。
カーターコーチが、39才前後のころのコーチング実践。
なんてことだ、もう年下になっているじゃないか、このころのカーター氏は…
厳しい教育環境の中、バスケットボールを通じて強い人間を育てる。カーターコーチの、「コーチング的な場面」について考えてみました。
行動変容を促進する
コーチの最終目標は、クライアントの行動に変化を起こすこと。目標に向けて動くこと。この点、カーターコーチはすごい。だめになっていたチームに変化をもたらします。
とくに、カーターコーチの素敵な点を2つ考察。
1 問いを継続させる。
有名な問いだと思います。カーター氏のオリジナルでしょうか。「コーチカーター」、「名言」などで検索するとだいたい出てくる。最後に、選手が詩を引用してコーチに返答する場面は、作中のハイライトでしょう。問いは、こんな感じ(ママではない)。
「君が恐れているものは、なんだ?」
コーチは、この問いを初対面で選手に問う。そして、選手の中でこの問いは生命を持ち、トレーニングの間も、試合中にも、私生活においても、ずっと機能し続ける。
コーチがもたらす価値観と、選手たちの価値観がぶつかる。それは、選手たちがコーチと同様にネクタイをするかどうか、に象徴されているようです。そして、コーチはつねにスタイリッシュにスーツを着こなしていますが、選手たちも、コーチを信頼するようになると、ジャケットとタイをするようになる。ティーンエイジャーらしくやんちゃに着崩しながらも。
いわば、作品は全編にわたってコーチと選手の対話をひたすら描いたもの、ですが、この対話の根底にある問いが、「君が恐れているものは、なんだ?」です。
こちらの本でいうところのセルフトークBが、ずっと選手の意識に流れているのですね。
2 行動のイメージを具体化する
コーチングでは、クライアントに行動変容を促します。行動変容には、そのイメージをどれだけ具体的にクライアントが描けるかも、大きなポイントです。
こちらの本には、おもしろいことが書いてあります。こんな感じ(ママではない)。
たとえば「理想のビジネスマン」の姿をクライアントと一緒にコーチが描くとする。そのときにコーチが問う、イメージの具体化の質問例。
理想のビジネスマンは:
「どんな歩き方をする?」
「どんなスーツを着ている?」
「どんな音楽を聴いている?」
「どんな昼ごはんを食べている?」
「部下となんの話をしている?」
さて、カーターコーチはこれが上手い。
弱小チームにむかって、つねにこう聞くのです。
「われわれがチャンピオンなら、われわれは練習にどう取り組んでいる?」
「われわれがチャンピオンなら、どう行動すべき?」
また、戦術の立案はカーターコーチの得意とするもののようですが、こんな感じ。
たとえばトリッキーな戦術には、昔カーターコーチが出会った小悪魔的な女の子Aに悪さされた経験を語り、戦術名を「A」とします。
ゲーム中に戦術「A」を発動させるとき、選手たちは、いかに相手の裏をかくかに集中する。Aさんという女の子のイメージをチームに共有させ、共通の戦術イメージにしてしまう。
これなんか、どんな個人にも、チームにも使えそうだな、と思います。「もし失敗したらどうしよう」というセルフトークが心に忍び込んでくるのを防ぐ効果もあるでしょう。
他にも、いろいろな考えがめぐる作品でした。僕のようなコーチ見習いの人には、気づきが多い作品ですね。
僕は教師という仕事がら、また、過去にスポーツコーチをやっていたことからも、指導者を主人公にする映画をよくみてきました。
・「コーチカーター」
・「タイタンズを忘れない」
・「フリーダムライターズ」
・「ヒストリーボーイズ」
・「奇跡の教室 受け継ぐものたちへ」
・「4分間のピアニスト」
などなど。いくつかすぐ思い当たるものがあります。こういうものを今の自分の問題意識から見直してみる、ということをときどきやってみたいと思います。